ここなつ映画レビュー

「われらが背きし者」

「裏切りのサーカス」の原作者ジョン・ル・カルの作品をスザンナ・ホワイト監督が映画化。MI6絡みも含めて「裏切りのサーカス」にテイストが似ていなくもないが、かの作品より人間味がある作品になっている。

高級シャトー・ブルゴーニュワインに始まり、庶民のシングルモルトでエンドロールを迎える。大人の夜に相応しい作品。


大学で詩を教えているペリー（ユアン・マグレガー）と弁護士のヴィル（ナオミ・ハリス）は、結婚10年目にしてペリーの教え子との浮気が原因でどこかちぐはぐな関係になってしまっている。関係を立て直すことも含めてモロッコに休暇旅行に来てみたものの、ディナーの最中にヴィルは仕事だと言ってペリーを置き去りにして出掛ける始末。一人残ったペリーは、居合わせたロシア人に一緒に飲むよう席に誘われる。その彼はディマ（ステラン・スカルスガルド）というロシアンマフィアであった。

その偶然の出会いから、ペリーはディマにあることを依頼される。ロンドンまでUSBを運び、MI6に渡して欲しいというのだ。ディマはただのロシアンマフィアではなく、組織の財務の役割を統括する重鎮であったのだ。しかし、プリンスと呼ばれる先代ボスの息子が市場を牛耳るようになってから、ディマの立場は危うくなってしまう。プリンスは、ロシア政府と結託して市場を牛耳るようになっただけでなく、汚れた金をロンダリングする為に、イギリスに銀行を開設することを目論んでいた。そこには多数の人脈が関わっており、その中には元MI6で今は議員となっている者も居た。その、金の流れにまつわる全てのことを知り尽くしていたディマであったが、新しい銀行の開設が完了して全ての権利をプリンスに譲渡した瞬間、彼は家族もろとも消される運命にある。何故なら同じように金庫番だったかつての親友であり同僚であった男は、既に別件でサインをした後に、プリンスらによってむごたらしく消されてしまったからだ。ディマはMI6に庇護を求める為に、ペリーに全てを託す。そしてそこからペリーは、諜報活動の渦に巻き込まれるのだ…。


スリリングな展開と、哀しい程美しいモロッコ、ベルン、フレンチアルプスの風景。いわゆるマフィアの派手派手しいパーティの様子なども緊迫感に華を添える。身体中に入れ墨を施したデカい図体の強面の反面、家族を愛して止まないロシアンマフィアを演じるステラン・スカルスガルドの怪演。そして何故かしら不可思議にも友情のようなものが芽生えるペリーとディマ。

民間人のユアン・マグレガーが、余りにも事件に深入りし過ぎるのには多少の疑問は残るものの、恐らく彼の人間性の良さを表したかったのではないか、と自分の中で結論づけた。戦い慣れている訳でもマッチョでもない彼が、自ら火中の栗を拾いまくる。そして、昔気質と言っていい程の、「情」が彼らを結び付けて行く過程に引き込まれていく。

「最近面白い作品あった？」と人に聞かれたら、余計なことは言わずに黙ってこれを勧めたい、そんな作品。


最後の最後に本気のネタバレなのだけれど…疑問があったので…（未見の方は読まないで下さい）。
ヘリコプターの墜落を仕掛けたのは、プリンス？それとも議員？まさかMI6の上司ではない…よね？(2016年に観た洋画)

「われらが背きし者」

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「ペイ・ザ・ゴースト ハロウィンの生贄」

「俺たちのニコラス・ケイジ」の作品は、好き好き大好き。更にはこれは正統派ホラー作品である。美味しいなぁ〜、と我ながら思う。弱った感じのニコラス・ケイジが終始息子への愛で動いていく。


少しネタバレ。

マイク（ニコラス・ケイジ）は、終身雇用の資格を取って家族に安定を与えたいと思っている大学講師。妻と7歳の一人息子との3人暮らしである。
ハロウィンの晩、祭りの人混みに息子を連れ出したマイク。楽しい夜になるはずであった。しかし、アイスを買おうとちょっと手を離した隙に、愛息子は忽然と姿を消してしまう。

何故息子は消えてしまったのか？無事なのか？無事ならば何処にいるのか？「何故目を離したの？！」と自分を責め続ける妻とも別居し、マイクは息子探しにのめり込む。いたずらに月日は過ぎ、息子を失ってからもう一年が経とうとしていた。ある時マイクはN.Y.の街角で、息子を見かける。それは幻影なのか？それとも…？そして怪奇現象も起こるようになる。息子の幻影に導かれ、マイクの謎解きは更に進む。アメリカ開拓時代にN.Y.で起こった悲劇のこと…、ケルト文明…。果たしてマイクは謎解きに成功するのか？息子を見つけることができるのか？


面白かった。少なくとも私はこういうの好き好き大好き。

だが、ケチをつける意図は全くないのだけれど、「ペイ・ザ・ゴースト」と言いながら、何も支払わず助かるのは如何なものか？少なくとも御供えするとかさ。

ゴーストの方も、怨みの深さはわかる。わかるけれども、年に3人の子供をさらうという数の理屈も通っているんだけど、中国系の子供をさらっちゃいかんだろう、と思う。開拓当時のN.Y.には中国系の移民はいなかったはずだから。彼女（ゴースト）を火あぶりにした住民の末裔を根絶やしにする、とかの目的で怨念を持ち続けるべきなのでは？

更に更に、謎解きに一役買った女教授の最期は…ありゃー酷い。むやみに他人に協力したり、親切にしたりしてはいけない、ということか？エンドロール後の彼女に関する描写は、まあやむを得ないかな、と思う。

(2016年に観た洋画)

「ペイ・ザ・ゴースト ハロウィンの生贄」

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「ある天文学者の恋文」

多少ネタバレ的なものもありつつ。

壮大な宇宙についての学問と、それに比べればちっぽけな存在の人間の人生を、ロマンと絡め合わせた大人の恋のファンタジー。生まれて初めての満天の星空を眺めた時に抱く悠久のロマンを感ぜずにはいられない。
はずなのだが、もう一人の私がこう囁く。所詮、金持ちのインテリの爺さんの道楽。生きている内は家庭を裏切り、死んでからも今生の人々を涙させるのは如何なものか？

だが、ま、金持ちの爺さんの道楽、と思えば、さほど腹も立たず、落ち着いて観ることができた。エイミー（オルガ・キュリレンコ）が抱く恋心も、自分が原因で永久に失ってしまった父親に対する大きなファザーコンプレックスだと思えば納得だし。それどころか1度だけ涙してしまった。エイミーの母が、3回目のランチで手渡すように言われた、と、エド（ジェレミー・アイアンズ）からの手紙を娘エイミーに手渡すシーンである。夫を失い、子供も実家を避けて帰って来ない、そんな半生を送る女性に想いを馳せる事は辛く哀しい作業だ。

とはいえ、首尾一貫して金持ちの爺さんの道楽、な訳だから、泣いたってそこそこ。感じるロマンもそこそこ。斜に構えて観る自分こそが絶望的に現実主義者であることを思い知らされる。男のロマンを昇華させることによって置いてけぼりになる気持ちってあるのだなぁ（いやいや女のロマンもあったでしょう？と言われるかもしれないけど、ポンと別荘が貰える筈もないし、壊した家庭の家族が卒業式に来てお祝いを言うなんてあり得ない）。ジュゼッペ・トルナトーレ、頼むよひとつ。



(2016年に観た洋画)

「ある天文学者の恋文」

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「ラスト・ウィッチ・ハンター」

（私のように）ヴィン・ディーゼルを好きでなければ観る必要がない作品かもしれない。ちょっと、いやだいぶ微妙な作品であった。世界観は好きなんだけどなー。どうしてあの世界観をつまらなく、いや失礼、訳分からなくしてしまうのだろうか？いや、ホントに今思い返しても、魔女・魔術、蘇り、不死のウィッチ・ハンター、800年に渡る怨念と因縁…なんて、それだけでワクワクものだし、更にそれに（私のような人が好きな）ヴィン・ディーゼルなのだから、何の不満も無い筈なのだ。


ネタバレ的なモノ満載で。


っていうか、800年前のコールダーは、アレ役者はヴィン・ディーゼルではないよね？その辺がまず気になっちゃって、話に入り込めず。マイケル・ケインとヴィン・ディーゼルの渋い絡みもわずかで終了。いやだけどもだけど、マイケル・ケインとヴィン・ディーゼルの関係性や、それ以降の謎解きや魔女専のバーへの訪問、魔女刑務所、魔女セレブ（なんじゃそりゃ？）の館への訪問などなどは面白かったのよ。

だーかーらー…何故それなのに微妙になってしまったかというと、もしかしたらひとえにオーラスの決戦があんまり面白くなかったからなのかもしれない。ローズ・レスリーが相手の心に入り込める技も多発されて有り難み無し。だし、イライジャ・ウッドの唐突な裏切りが意味わからんよ。誰か教えて欲しい。自宅に火を放ったのは両親？何故そこから助け出してくれたヴィン・ディーゼルを恨む？いや別にヴィン・ディーゼルを恨んでいる訳ではなくて、ただ単に魔術界に憧れて魂売る系？あの役いらね、と言う位の究極のちょい役が何言ってんだか。いやホント誰か親切で知識のある方に教えて欲しい。彼の存在意義を。37代目のドーランならば、在りかは判っているはずなので、最初っから魔女の心臓持って走って捧げに行けよ。と、私は言いたい。

「斧と刀の」…だっけ？なんちゃらっていう秘密組織もお手盛り過ぎる。800年も続いている割には、登場人物がマイケル・ケインとイライジャ・ウッドだけなのは解せない。アレを狙って内輪揉めして、もっと早い内に魍魎跋扈する輩がいてもおかしくないのに。800年も何をしていたのか？

などなど、つい興奮してしまったが、改めて認識したのは、そんなこんなでも私はヴィン・ディーゼルさえ出ていれば、それである程度は満足してしまうのだなぁ…。何が好きかってあの声が好きなんだわー、と、改めてしみじみ思う。だが、チラシに書いてあった「ヴィン・ディーゼルが『ワイルド・スピード』『ガーディアン・オブ・ギャラクシー』の次に選んだのは…」っていうコピーはやめてくれるかな？誰もが認識している「ワイルド・スピード」はいいけど、「ガーディアン・オブ・ギャラクシー」のあの役を彼の代表作と言われても。じゃ、それ以外の（＆それを超える）近々の代表作言ってみ、と言われればそれはそれで困るんだけどさ。(2016年に観た洋画)

「ラスト・ウィッチ・ハンター」

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