たかが「人形劇」と侮ってはいけません。
「人形にも表情がある!」
と感嘆すること必至です。
思えば、“たかが人形劇”を何故観に行こうかと思ったかというと、新婚旅行で虜になったベルギーはブリュッセルのトーヌ劇場で、マリオネットの演ずる「カルメン」を観て、「大人も楽しめる人形劇」が存在するのだと感じ入った経験があったからです。
トーヌ劇場は、ブリュッセルのグランプラスから程近い、イロ・サクレ地区のレストラン街の小道を入った所にある、人形劇専門の劇場です。ベルギービールとムール貝をたらふく堪能した後、地下がバーになっている小洒落た小さな劇場へ足を運ぶと、そこでは、人間の幼児程の大きさのある人形達を、むくつけき親父達が(操っている所が見えるので、毛深くて太い腕を持った親父達であることが判ってしまう)巧みに操り、まるで意志を持ったかのように人形達が演じるのを鑑賞することができます。
幕間には、壁にかかった、本日の出番が無い人形達に囲まれながら、地下のバーで一杯ひっかける、という楽しみもあります。
さて、本題に戻りますが、この「ストリングス~愛と絆の旅路~」は、さながらシェークスピアの戯曲をシェークスピアを専門に演じる劇団が演じていたかのよう。それ程、深く、重厚で、人生のあり方さえをも感じさせる作品でした。
そして又、彼ら人形達の表情!恐ろしいくらいです。
大根役者真っ青なのだ!
裏切りによって陰謀に巻き込まれた王子が、復讐を果たすべく旅をしながら、根底手にあった自己の出自や人生を省みる、という、暗く、おどろおどろしい設定ではありますが、充分に映画を堪能した、という気持ちで劇場を後にすることができました。
考えてみれば、日本人は、あの、お能に代表されるように、無機質の仮面にも表情を感じ取ることができるセンシティブな素地を持っているのではないでしょうか?
つまり、この人形達に表情を感じ取ることができるのは、自然の流れなのかもしれません。
★★★★
満点★5つ
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(2007年)洋画