あの衝撃的なダイアナ妃の事故死から10年。
世界中が驚き、多くの人が嘆き悲しんだ事件でした。
もう10年と思うのか、まだ10年と思うのか、人それぞれだとは思いますが…
この作品は、事故死の原因をサスペンス調に解き明かす趣向ではなく、事故直後から葬儀までの王室のありようを描いたものです。
イギリス王室って質素なのね、とか、ここまで政治に関与しているんだ(形骸的であったとしても、ね)、とか、結構イギリス王室に対する新しい発見がありました。
立場の違いが大前提だから、こんなこと言える筋合いじゃないのは重々承知ですが、こんなにも“息子の嫁に振り回される王室”って、何なのだろう…?
私が“嫁”などという言葉を使うのはあまりにもおこがましいのですが、息子を持つ身として、ちょっと同情しちゃいました。ま、いずれにせよ遠い遠い先のことですし。
作品の中で、自分の領地にいる美しい牡鹿に出会ったエリザベス女王は、そのあまりの神々しさに、できれば狩られずに生き延びて欲しいと願います。
この牡鹿はダイアナ妃のメタファーなのではないでしょうか。
美しく、毅然と、すっくと自分の足で大地に立つ牡鹿。できれば逃げて欲しい、自由に駆け抜けて欲しい、そう願う女王。
しかし、夫であるフィリップ殿下の獲物となり、立派な体躯は屍となってしまう。それを見て女王は初めて涙するのです。
(ま、意地悪な見方をすれば、“嫁が死んでも泣かないのに、鹿が死んだら泣くのかよ”という見方もありますが。)
世論に押されて、避暑地のバルモラル城からバッキンガム宮殿まで戻り、広場に埋め尽くされた手向けの花々やメッセージに目を留める王室一家。
(バルモラル城、昔行ったなぁ、懐かしい…バッキンガム宮殿にはもっと昔に行ったなぁ…)
世論がここまで影響力を持つとは、王室としては考えられなかったことなのでしょうね。
そういう点は確かに現代的である、という気がします。
★★★★
(満点★5つ)
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(2007年洋画)