「ラブソングができるまで」

アレックス（ヒュー・グラント）は８０年代に一世を風靡したアイドルグループ「ＰｏＰ」の主要メンバー。でも今やその面影はなく、当時のボーカルはナイトの称号を受け第一線で活躍しているのに、自らはグループ解散当事に起死回生を賭けて出したソロアルバムも全く売れず、地方のどさ回りの日々。その営業の仕事も日に日に少なくなってきて、マネージャーともども、辛い日々を過ごしています。

そこに偶然、コーラというカリスマ・アイドルが、昔両親の離婚時にアレックスの曲に励まされたということで、次回作の執筆をアレックスにご指名。こんなチャンスはもう二度と巡ってこない！しかもタイムリミットは、えっ！？今週の金曜日！？

なんとなんと、どーすりゃいいのか？アレックスは作曲家兼アレンジャー、紹介された作詞家は、理屈っぽいだけのセンスが合わないヤツ。

そこに、自宅の植物係（植木に水をあげてくれる人）として来ていたソフィー（ドリュー・バリモア）が、抜群の作詞センスを持っていることを見抜いたアレックス。嫌がるソフィーを一生懸命口説いて、二人三脚の新曲作りが始まります。

実はソフィーに作詞のセンスがあるのもそのはず、大学時代に作家の講義を取っていて、かなり優秀な力を発揮していたよう。しかし、そこでの手痛い過去に引きずられ、なかなか自分自身を信じることができません。手痛い過去とは…教授の恋人になったのも束の間、実は彼には婚約者がいて修羅場。それだけならまだしも、そのことを当の教授に悪意的に小説に書かれ、しかもその小説は今やベストセラーに！
書店の前を通る度に、自尊心を傷つけられて過ごすソフィー。

つまりは、影響の与え方は違っても、過去のしがらみから逃れられない２人の男女が、ひとつの作品を作ることによって、互いにぶつかり合い、理解し合い、許し合い、お互いを愛するようになる、というラブコメの王道物語、ですな。

特に、こういうハンサムなんだけれど情けない感じの役をやらせたら、ヒュー・グラントは天下一品でしょう！

ドリュー・バリモアもハイテンションながらもイマイチ自分の殻を破れない、若い女性の役どころがぴったりでした。

ま・さ・に・　　安心して観られるラブコメ！



なんだけど、でもね。それだけじゃあない。

ヒュー・グラントがどさ回りをする度に、中年女性が群がってきゃーきゃー言う様は、ひっじょーに共感できるし（笑）、…あ、特にソフィーの姉がアレックスの往年のファンで、家に招待したりして燃える所なんかね。空想の世界が現実になった少女の感じですっごく良かったですよ（勿論ビジュアル的には少女の感じからは程遠いのですが）。

にっくき教授に再会して、ずっとそらんじてきた復讐のセリフを言えずに、ただただ相手の巧みな言葉に頷いてしまうドリューの心理も痛いほど判った。

ただのめでたしめでたしのラブコメではなく（カリスマ・アイドル、コーラのエピソードさえも含めて）、何かしらの過去を乗り越えて生きていく、という普遍的なテーマを持った作品でした。

しばらくは８０年代アイドルグループ「ＰｏＰ」の曲が耳から離れないこと必至です（笑）。


★★★
（満点★５つ）

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http://www.cinemacafe.net/TB/movies/?18481

(2007年洋画)