
いかにも「湊かなえ」な作品。「イヤミスの女王」と呼ばれている原作者であるが、「イヤミス」の「イヤ」は嫌な気持ちになるの「イヤ」で「ミス」は「ミステリー」の事を指す。本作はそれ程…最高潮に嫌な気持ちになる訳では無いが、底しれぬ暗さと後味の悪さは「嫌な気持ち」と言っても差し支えあるまい。ミステリー色はやや弱いけれど、時系列を辿っていけば謎解きの解に到達するという点では正しくミステリーなのであろう。
少しネタバレありの感想です。
根底を貫くもの…構成の基盤となるものは一言で言えば「毒親」ということだと思う。本作の登場人物の主な女性陣はあまねく毒親の元で育っている。驚くような含有比率であるが、事の強弱は別として親子関係ではこういう、すなわち子供が親の所有物であるかのように思って好き勝手に扱って良いとする状態が結構あるのではないかと思う。子が自立する過程を経て毒親から解放される場合もあるが、本作で描かれている状況はそんな生易しいものではない。それこそ幼少の時から繰り返される虐待は、抵抗どころか考える術さえ奪ってしまうものなのだから。
対象が少女という相乗効果もあり、不愉快極まりない内容なのであるが、タイトルに込められた意図としては「それでも新しい世界へと旅立つ」という願望が込められているのだろう。私はどちらかというと暗澹たる思いが拭えなかったが。旅立とうとしたところで…といった感じなのだ。もちろん彼女たちの人生にとってはハッピーエンドがいいに決まっている。決まっているんだけどね。
ところで枝葉末節なことをひとつ。作中に出てくるTDLを想定したと思われるテーマパークの名前が「ドリームランド」であるのだが…「ドリームランド」は横浜市民や奈良県民にとってはかつて実在した遊園地であり、大変思い出深い場所と名前である(ネットで調べたら現在郡山市にも「ドリームランド」は存在するらしいが横浜・奈良とは経営母体が違う)。こういった作品でこのような具体的な名称を使うのは避けて欲しかったところ。

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