胸が苦しくなる。
良い作品だったが、胸が苦しくなる。家族のあり方、人生のあり方、情熱の行方などについて心が千々に乱れるからだ。
若い時に兄弟のデュオでデビューしたドニー(ケイシー・アフレック)とジョー(ウォルトン・ゴギンズ)。最初は好調にヒットするかと思われたが、音楽業界はそんなに甘いものではなかった。そして…本当に音楽の才能があったのは実はドニーだけだったのだ。家族会議の結果、ドニーだけが都会のスタジオでソロデビューのためのレコーディングを行いに赴く。その才能とて結局は他を圧倒する輝きを放つことは出来なかった。父は彼の為に田畑を売り、ひたすら彼の成功のために尽力した。だが…。
そして中年に差し掛かった今、ドニーは都会で妻子を持ち、音楽スタジオの貸し出しを仕事としている。夫婦で経営するそれの収支は厳しく、生活はかつかつである。兄のジョーの方は実家に残り、離れの納屋で溶接の仕事などを行なっている。夢は破れたのだ。
ところが、昨今の動画配信、SNSの隆盛を受けて、昔の彼らのアルバム「ドリーミン・ワイルド」が脚光を浴びるという出来事が起きた。これを機にライブ活動を再開してはどうか?という誘いが来る。悩んだ結果、兄弟はその話に乗ってみることにする。ライブの為にギグのメンバーも募り、練習を重ねるドニーとジョー。年老いた父母をはじめとする家族もそれを応援する。
しかし、結局は、音楽に対する思い入れというのか、生き方の違いというのか、ともかくほころびが出てしまう。それは兄弟間の諍いにも発展していくのであった。
若い頃の兄弟2人のそれぞれや、現在のそれぞれ、更には家族の生活を犠牲にしてまでも音楽に賭けた日々に対する思い出と悔恨。音楽に限らず、一芸に秀でてスポットライトの当たる場所に行く為に、どれだけ多くの犠牲があったのか、また、その影にどれだけ多くの「報われない」人々が存在したのかと思うと、胸の苦しさを覚えずにいられない。それを、家族のあり方を含めて、ある種淡々と描いていて、そこがまたじわじわと胸を苦しくさせる。
ラストは割と感動的な終わり方なのだが、それも私にとってみれば、苦しい気持ちを増幅させるものだった。「自分の人生って何だったんだろう?」などと思い落ち込むタイプには向かない作品だと思う。
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