私はこれを鑑賞したことがなかった。私としたことがジョニー・トー監督作品で観たことのない作品があるなんて…!と驚いたものの、理由はすぐに判明した。本作は、制作当時日本で映画館上映をしなかったのだ。それでこの2024年の公開が日本では初の劇場公開となったようだ(正確には前作「エレクション 黒社会」の公開時にどこかで抱き合わせで数回上映したというが)。
香港黒社会。「和連勝会」の会長選挙は2年ごとに行われる。前回の選挙で会長となったロク(サイモン・ヤム)は、通例であれば任期を終えたら継続して会長の座に就くことはできず、新たに会長を選び直さなければならないところ、どうしてもその座を譲ることが惜しくなり、何とかして御法度の二期連続会長の座を得ることを目論む。
そこに対抗馬として現れたのがジミー(ルイス・クー)だ。ジミーは元々は会長の座になど全く興味が無かったのだが、自分の事業に有利になると考えた結果、和連勝会の会長の座を狙うことにしたのだ。
そして、血で血を洗う激しい内部抗争が再び勃発する…。
まあ…どろどろのぐちゃぐちゃの権力闘争。あな恐ろしや。それでもって、最も印象に残ったのが、ルイス・クーが先導する監禁・拷問・事後処置…だ。いやホント、食前食後には観たら絶対にダメ。今回、ロクが結構狂人っぽい振る舞いをしていたので、権力を持つと性格も変わるのか…いやいや、前作のラストのように、元からあんな残酷なヤツだったよね…とか思いつつ、実はジミーの方が数倍残虐だったとはね!してやられたというほかない。
こちらも骨太な作品ではあるとは思うが…どうも、狂気の部分の方が印象に残ってしまい、もろ手を挙げて推挙、という感じにはならない。だが、実はこれこそが、このグロさと狂気が、香港ノワール物として昔の香港映画の最右翼なのだろう。