「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」

大変面白うございました。「カメラを止めるな！」の上田慎一郎監督の長編作品第二弾である。本作は韓国ドラマが出展なので監督技量だけに着目すると、「カメラを止めるな！」がフロックではなかったと示したのではないだろうか。

 

題名の通り、公務員と詐欺師たちのお話なのだが…税務署に勤める生真面目な公務員熊沢二郎(内野聖陽)は、部下の勇み足からのっぴきならない事態に足を踏み込むことになり、それが故に公務員としての、いや人間としての誇りをズタズタにされる。その上同じ時に中古車詐欺に遭い、なけなしの金を騙し取られる。警察官の友人に事情を話して騙された相手の詐欺師氷室マコト(岡田将生)を捕えようとするが、逆に氷室からある話を持ち掛けられる。それは、熊沢がプライドを踏みにじられた相手である企業家橘(小澤征悦)を詐欺で騙して大金を奪い取り、橘が脱税している10億円もの金額を税務署に還元しようじゃないか、という提案だった。

 

こうして題名の通り、公務員＝税務署員熊沢と、氷室と彼率いる詐欺師軍団がタッグを組んで、脱税王を相手に痛快にせめぎ合いを行う。本当に、目が離せない展開となるのだ。

 

最初、主演の熊沢のことを内野聖陽とは判らなくて、博多華丸大吉かと思っていた。華丸と大吉とどっちなの？と言うべきところなのだろうが、華丸と大吉とどちらもミックスしたような感じなので、華丸大吉と言うほかない。判っていただけますでしょうか…？華丸と大吉のどちらの要素も併せ持っていて、どちらにも見えるというマジックだ。…だから博多華丸大吉なんです…。今思い出しても博多華丸大吉だ。それでその博多華丸大吉、もとい内野聖陽が、本当に上手い。最後まで税務署員魂を貫き通すのも、くたびれた風貌とは対照的にすごくカッコいい。岡田将生も、彼のいやらしい部分と人から好青年だと思われる部分が上手く混ざって醸造されていて文句なし。大掛かりな詐欺の手口もあっぱれだし、二転三転の展開もハラハラさせる上に痛快である。詐欺の手口の一部はちょっと「ローガン・ラッキー」を思い出させたけれど。

 

こういう肩の凝らない、若年層向けに振り切らない詐欺師物も良いものだ。「大人向け」とは必ずしも言えないのだが、若者人気の歌手やタレントやアイドルを据えていないので、ターゲットとしては30代以降だと思うのだがいかが？(誰に聞いていますか？)あまりにも荒唐無稽だったり漫画チックだったりし過ぎなかったので…かといって現実的かと言えばそれはまた違うのだけれど…そこも良かった。こういう作品を映画で観られるのって幸せだなぁ。