知っている俳優が出ていたので観た。今年知った(気づいた)俳優と言っていい。そして彼らはとても気になる俳優だった。
一人はバンサン・ラコスト。今年観た「幻滅」にも出ていてとても気になるなぁ、と思っていたのだ。そうしたら彼は「アマンダと僕」の主人公だったんだね。顔つきがふくよかになっていたので「幻滅」の時には気づかなかった。この人はいいよ。多少イケすかない表情もするのだが、「アマンダと僕」の時はそんな事全く無い人生に真摯な青年の顔だったので、演技派なのだろうな、と思う。本作では主演リュカ(ポール・キルシェ)の兄の役を演じている。
もう一人はエルバン・ケポア・ファレ。彼は、どこの映画情報サイトにも書いてないのだけれど、絶対に今年の東京国際映画祭で観た「パッセージ」に出てきた人だと思うんだよね。「パッセージ」でもゲイの役だった(ちなみにその「パッセージ」で主役だったフランツ・ロゴフスキにそっくりな人がちょい役で出ていたようなのだが気のせいか)。本作ではパリで暮らすリュカの兄の友人役で、リュカが恋心を抱く。
お話としては、父親を車の事故で失ったフランス郊外出身の高校生の少年リュカが、心の喪失を埋められず、母親や兄やその他の人間関係の中でもがきながら青春の日々を過ごすというもの。
思春期の喪失と再生を、肉親の死を通して描いている。青春譚なのであるが、普通と違うのはリュカがゲイだということか。だが、フランス映画らしく、その点についてとりわけクローズアップされる事項ではない、と扱っているようだ。多様性に寛容なお国柄が見て取れる。
ポール・キルシェは美しく、その年頃らしい演技が魅力的だ。脇を固める俳優たちは前述の2人に加えてジュリエット・ビノシュも居て堅実。クリストフ・オノレ監督の半自伝的作品なのだというが、とてもフランス的だなぁ、と感じた。

(2023年洋画)