藤井道人監督作品である。
これは、同監督の「デイアンドナイト」にテイストが似ている。閉鎖的な地域、底辺に生きる人間、家族との関係、特に亡き父に関する汚名を晴らさんと主人公が地域社会に立ち向かう設定などが。取り巻く環境に足掻きもがき、救いのないラストに繋がっていく展開である。
最初、横浜流星だとは思わなかったなぁ!彼上手いね、というか、彼に対してこれまで持っていたイメージは崩れた。全く単なるイケメンなどではない(「単なるイケメン」はそれはそれで好きではあるが)。黒木華、古田新太、中村獅童も良かった。良かったというか、こちらはまあ想定通りの役柄と演技ではあったけれど。
閉ざされた地域の名家、伝わる伝統芸能(薪能)などは、妖しい日本のムラ社会の闇を見せつけられているようで空恐ろしい気持ちにさえなる。それと並列して、地域社会の産業誘致にまつわる罠や、不法労働についての問題提起もしていて社会派作品だとも言える。秀作。
(2023年邦画)