内容を本当にすっかり忘れてしまった作品のことを書くこの辛さよ。じゃ、書くなよ、な訳だが、各方面に色々なご無礼をし続けていたこの半年の反省を込めて、そして恐らく自分に対する報告事項として、その年に観た作品はその年の内に書くという自分内ルールを遂行する。
私は世間の皆様程にはリーアム・ニーソンの事を評価していない。あ、自分で書いててよくもまあこんな偉そうな書き方ができるものだ、と思う。自分のことを嫌いになるのはこういう時であるが、まずその前提をお伝えする事によって、本作の内容をすっかり忘れてしまった事の言い訳のひとつにしたいと思う。じゃ、観るなよ、は言いっこなしということで。ホント、じゃ、観るなよ、な訳だが、彼の出る作品の設定はいつもソソるんだよなぁ。だからつい観てしまうのだ。
ここではリーアム・ニーソンは、アレックスという熟練の殺し屋の設定である。腕が立ち仕事は正確無比だが、彼は実はアルツハイマー病を患っていた。引退をしたいのだが、組織はそれを許してくれない。そして次の仕事を依頼されたのだが、それが巡り巡って訳ありの少女を殺害する事に繋がったことから、少女を殺すなんて、とアレックスはその任務を拒否し、今度は組織から追われる身となる。
一方で、組織的な人身売買を摘発しようと任務を行っていたFBIのヴィンセント(ガイ・ピアース)は、潜入捜査官としてメキシコのエルパソで捜査にあたっていたが、ある事件を発端にそれが大きな組織の闇に繋がっていることに気づき、部下と共にそれを暴くべく行動を起こす。だが、闇の壁は高くて厚く、彼らは非常に苦戦する。
この「訳ありの少女」が最初の接点となり、アレックスとヴィンセントのそれぞれの仕事…暗殺者とFBI捜査官…が螺旋のように絡み合っていくのだ。忘れていた分を思い出したら、これはすごく面白い展開だった。アルツハイマーを患った孤高の殺し屋というのも良いし、ヴィンセントがまたカッコいいのよ、痩せさらばえてはいるんだけど(割と最後の方までガイ・ピアースと気づかなかった)。悪役のモニカ・ベルッチも大物悪役として華があり適任であった。
こんなに面白い内容なのに完全に忘れてしまうとは。だが、アレックスが次第に進行していくアルツハイマーの症状に対応するべく、任務の内容や行ったことを腕に書いていたように(書かないと忘れちゃうから)、私もこういう所に書き残して記憶を留めておくことが肝要なのだ、と改めて感じた次第。作品と現在自分が置かれている状態が期せずしてシンクロしてしまった。何か変なオチみたいだ。

(2023年洋画)