本作は、2015年に第28回東京国際映画祭でコンペティション作品として上映されたものが、この夏「JAZZ FIML FESTIBAL」なるイベント上映にて上梓されていたので鑑賞した。
8年前…もう8年になるのか!…鑑賞した時、心を掴まれ、何故これがコンペ部門で無冠だったのか、理由が判らなかったものだ。平たく言えば才能のあるダメ男の話、と当時私は評していて、更にはそのダメ男を愛して愛して、愛し尽くした後に見限るヒロインの心情を我が事のように感じたのだった。
2015年当時鑑賞した時のレビュー。原題「ボーン・トゥ・ビー・ブルー」のままである。
同じ作品を劇場で2回以上観ることが珍しい私なのであるが、何故か本作がスクリーン上映されることを知ると、居ても立っても居られなくなり、観に行ったのだった。8年前の当時の私が感じたことと、だいぶ月日が経った今の私が感じることとがどう違うのかを確かめたかった気持ちもあった。
…というのは、仕事に限らずツイていない事があると(贔屓のチームが衝撃的な負け方をしたり、息子がサヨナラホームランを打たれたり…って野球の話につい持っていくのが悪い癖)、昔はなかなか切り替えができなかったり、ブルーな気持ちが長く続いたりしたのだけれど、近年の自分は「今日はこういう日」と、諦めというのとは少し違うが、俯瞰して割り切ることができるようになっていたので、もしかしたら物の見方が、感じ方が多少変わってきているのかもしれない、と思っているのだ。
確かに8年前の私の方が感性が豊かだったのかもしれない。あの時感じた痺れるような辛さ切なさは、今回の鑑賞では薄まっていたかもしれない。だが、やはり人生の、芸術の、辛さ切なさについては胸に迫った。そしてそれはじわじわと…という感覚であった。迫り方の質が違ったのかも。
そして8年前にも感じたけれどその時以上に感じたことは、
イーサン・ホークは素晴らしい。
その一言である。
(2023年洋画)