懐かしいというか。しみじみほのぼのとした気持ちになる。あとはちょっぴり憧れも。私は高校時代は運動部だったので、こういう「文化系男子」たちにはほのかに憧れを抱く。
懐かしいのは当然で、本作は小中和哉監督の実体験を作品にしたものだそうだ。高校時代最後の文化祭。夏休み。ロケ地の八王子の廃校では、あの頃の弾けた、そしてなんとも言えない焦燥感が映し出される。夢を夢のままにしてしまうのか、実現化の第一歩を踏み出すのか。夢を形にすることは青臭いのか、だがここで思い切らなければいつできるのか。
そんな風にして、彼らの映画作りは始まる。ああ、自主映画ってこんな風に撮っていくんだなぁ、というのが、彼らの青春の日常も絡めて微笑ましい。
スピルバーグ監督の「フェイブルマンズ」、私はまだ鑑賞していないのだが、監督の映画作りの根底を成す大切な日々を描いているという点ではテーマは同じである。だが本作「Single8」は、何と制作費600万円なのだと!これは大変なことだと思うよ。金を潤沢にかけられなくとも、作りたい作品を作るという情熱は伝わってきた。

(2023年邦画)