「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督の作品。「ラ・ラ・ランド」は生涯ベストに入る程良かったので、絶対に観ようと思っていた。ところが、ふと上映時間を確認して驚いた。…189分。3時間超である。正直言って躊躇った。映画館に行って3時間超鑑賞して(予告編を入れれば3時間半近くになる)帰ってくる。これは一日仕事だ。気軽にサクッとという感じではない。いやいやでもでも、プロ野球観戦なんてそんなもんじゃん?と自分に言い聞かせたりもしてみた。プロ野球観戦と同じ位の時間だと思うと…いやプロ野球の方がもう少し長いかもだけど…さほど大したことないじゃん?だけど野球観戦は、広い空間での3時間超だし、イニング間にトイレに行ったりとかもできるしさぁ、ちょっと違うよね…とか何とか。
だから、かなりの覚悟を持って鑑賞に赴いた。結果、覚悟していた程には長さを感じなかった。私には面白い作品だったから。
「バビロン」とはバベルの塔の様(さま)である。そしてこの作品の喧騒と、上昇志向の果ての転落は、正にバベルの塔そのものだ。
時代がサイレントからトーキーへと変わる映画業界の世界を描いているが、そこで起こるはちゃめちゃで、(個人的には)かなり笑わせてくれるような出来事も、やがて哀しき…となる辺りは、流石デイミアン・チャゼル監督の手腕。結構笑わせてもらったが、最後は胸にズキュンとくるのが彼の特色だと思う。
マーゴット・ロビー上手かった!ブラッド・ピットもいつものブラピを演じるブラピではない感じがしてとても良かった。トビー・マグワイアは最初判らなかったなぁ。
あの独特の見せ物小屋的なグロさ(何故かエロさには繋がらない)もかなり好きなテイスト。ジャック・コンラッド(ブラッド・ピット)、ネリー・ラロイ(マーゴット・ロビー)、マニー・トレス(ディエゴ・カルバ)のメインどころだけではなく、レディ・フェイ(リー・ジュン・リー)、シドニー・パーマー(ジョバン・アデポ)などの描写にも胸が熱くなる。
けれど、映画業界に限らず「業界」というものは、栄枯盛衰が常で目まぐるしく変わっていくものなのだ。これに哀切を感じるということは、私もイケイケではなくなったということなのだろうなぁ。
(2023年洋画)