凄いものを観てしまった。凄過ぎたし怖過ぎた。何ってそれは、大地真央と高畑淳子だ。彼女たち2人に比べれば、永野芽郁なんて全くのお子様だ(実際「子供」の役だったんだけど、意味は違う)。戸田恵梨香とて、頑張ったわね、というレベルに過ぎない。
戸田恵梨香の人生を中心に、それを取り巻く親子間、家族間の物語を描いているが、それぞれの立場によって記憶の発生理由も違うし、言い分も違う。その構成の妙を味わう作品なのに、大地真央と高畑淳子に(私は)すっかりヤラレちゃったなぁ。母性。本作で貫いているのはどの世代どの家庭でも、一貫して父性の不在だ。とか何とか言えることはいくつもある。だが、そんな分析以上に、大地真央と高畑淳子の毛色の違うホラーに目が釘付けである。触手で絡め取りがんじがらめにする母性。表現の仕方は異なるけれど、大地真央と高畑淳子のそれは徹底している。
興味深いのは、母性の連鎖のいびつさだ。これが子供へ孫へと引き継がれていくはずが、歪んだ形で継承されていく。時には反発されたり是正されたりして。母性は本能ではない派の私にしても、環境が様々なバイヤスをかけることを前提として、個々の特性もあるのだと思わされる。
それにしても、子供はこんなにも母親に愛されたいと願うものなのだろうか。「人による」と言ってしまえばそれで終わってしまうのだが。母性の裏にある打算や究極の自己愛を感じ取ってしまう私には、何を言う資格もないのだろうけれど。

(ダメ男を娘に勧めてしまう母親(大地真央)ってどうかと思う)
(2022年邦画)