ぽろぽろ泣いてしまった。
こう書くと、ご覧になった方なら、あああのシーンね、と思い当たるであろうが、もちろんそのシーンでもぽろぽろ泣いたのだけれど、もう冒頭から涙腺が緩んでいたのである。そう、あの青山霜介(横浜流星)が寺の境内の展示で篠田千瑛(清原果那)の椿の水墨画を見て涙するシーン。私は既にあそこから泣いてしまったのだ。
一介の大学生だった青山霜介が、水墨画の大家篠田湖山(三浦友和)に見初められて弟子となり、水墨画の世界に魅せられていく。水墨画の世界に魅せられた、というよりむしろ、水墨画の世界が霜介を見初めたのである。
ただ、基本善人しか出てこない映画だから、「んなはずないよ」と斜めに見ることも可能であろう。本当に、びっくりするほど善人しか出てこないのだ。一般社会ではこれはあり得ないでしょう?増してや芸術家の世界などで。だから、ちょっと鼻白むこともできたはずである。だが、本作では私はそんなシラけた感情にはならなかった。むしろ、達観した人の元に集うのが善人だけで、それを支える人(西濱湖峰(江口洋介)や霜介の大学の友人)もまた善人だけだという設定に、ある種の納得感さえ抱いたのだ。霜介が何の反抗もせずに忠実に湖山の弟子となり得るのも、霜介の育ちが良いからなのだと思わせる。そして実はこの霜介の育ちの良さこそが肝(キモ)なのである。それは、霜介の人生の助けとなり、人を惹きつける力となっている。そして更にそこが、クライマックスのシーンに繋がると思うのだ。
タイトルの通り、僕が線を描くのではない。線が僕を描くのだ、と力強く思わせる。良作。

(2022年邦画)
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