ガラ・セレクション作品。ロシア/ベルギー映画。
ソクーロフ独特の映像美が全編にわたって展開される驚異の映像詩。と、解説で謳われていた。確かにすごい。目眩く、押し寄せる映像。こういうのを観られるから、映画祭ってやっぱりいい。
とはいえ、黄泉の世界の権力者は、基本急ぐことはないので、これらの映像詩は常にゆったりと流れる。だから多少眠たく思えてしまったのはここだけの秘密。
スターリンがベッドから目覚める。横にはキリストが横たわっている。いくつか辛辣な言葉をキリストに投げかけるが、彼はただ嘆くだけ。まだ父親から沙汰は無いのだ。
次々と歴史の人物が登場する。ヒトラー、ナポレオン、ムッソリーニ…チャーチル。
彼らは最後の審判を待っているようだ。当然誰もが自分こそは天国に行けるものだと思っている。
門番に言われて、神の門の前に集まる。
チャーチルが一番最初に門を開けようとする。すると、門の中から少し待て、と声がする。
次にベニート(=ムッソリーニ)が行く。すると門の声は言う。ベニート、君は地獄送りになった。
ヒトラー、奴はどこにいる?と言いながら、門は閉まってしまった。スターリンはそれを見て、もっと後にしよう、と言う。
歴史的人物たちは、互いによもやま話をする。アフリカ問題について、など(もちろん「当時の」知識に基づいている)。
神の門の扉の向こうにナポレオンがいた。スターリンはナポレオンに「レーニンを読んだか?」と聞く。フランス人はいつも嘘をつく。
よもやま話も散策も、ゆったりだ。彼らに急ぐ必要は全く無いのだから。
風車が回っている場所がある。風車め、いまいましい、回転を止めろ!
ナポレオンからもらった手榴弾を投げ入れて風車を壊す。
彼らは全員が乱暴者なのだ。意に染まなければ手段は厭わない。
稲妻が光る中、群衆が押し寄せる。砂のような群衆の動き。むろん群衆が何をしようが、傷つき朽ちていく兵士がいようが、彼ら為政者は全く関心を持たない。
餓鬼のように手を伸ばしてくる群衆。やがてそれは大波に変わる。
神の門はなかなか開かない。ようやくチャーチルの前で扉は開く。
資本家とは牛だよ。金になる牛だ。あとで我々が食う。
スターリンは会話をしながら、回廊を去っていく。
(2022年洋画)