肩の凝らない娯楽作品とは真逆の、観る者に緊張感を強いる作品。韓国の朴
正煕大統領の暗殺事件に関する話で、暗殺そのものもセンセーショナルに描かれているが、真に恐ろしいのはそこに至るまでの軍内部だ。政治のやり取りというのはなかなか一筋縄ではいかない。
イ・ビョンホンの出る作品に外れ無し。ここ数年、そう言い切ってしまっている私であるが(実際には外れが無い、ということは無い)、本作も誠にその通りで、しかしながらイ・ビョンホンだから作品が優れていたという訳でもない。忠義と正義を秤にかけた哀切漂う軍人は、イ・ビョンホンが演じてこそであるとは思うけれど。
イ・ビョンホンはともかく、1960年代から1970年代にかけての当時の韓国の政権内部の様子が、物事が決まって行くその様が、力関係・人間関係が、事実も恐らくこうであったであろうという描写なのだ。もちろん、だからといってドキュメンタリー映画の様相ではない。種々の演出も含めて、フィクションに近いものであるにせよ、きっと朝鮮戦争直後から国を建て直してきた韓国はこんな感じだったのだろうと思わせる。政権のNo.2である中央情報部長キム・ギュピョン(イ・ビョンホン)(史実で大統領を暗殺したのは中央情報部部長キム・ジェギュ)がアメリカに色々介入される所も、強硬派の警護室長クァク・サンチョン(イ・ヒジュン)に地位の逆転を狙われるのも、さもありなんな話だ。また、この大統領暗殺事件が、元中央情報部長のパク・ヨンガク(カク・ドウォン)がアメリカに亡命して韓国政治の腐敗を告発した事の事後処理を、現中央情報部長キム・ギピョンが大統領から任された事が発端であるというのも、非常に上手く描かれている。
正に力作。力のこもった作品である。朝鮮史に興味がある人も、政治スペクタクルが好きな人も、隠謀詭計が好きな人も、満足できる作品だと思う。あと、韓国映画の演技合戦が好きな人にも。
ところで、ラストに大統領執務室の金庫から大量の金塊を持ち出したのって、あれってやっぱり全斗煥がモデルだよね…?
(2021年アジア映画)
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