なかなかの。
かつては鳴らして今は引退している(はずの)年寄り泥棒達がチームを組んでロンドンの宝石店の金庫破りを行う。きっかけは妻を亡くしたばかりのブライアン(マイケル・ケイン)の所にヤマを持ちかけてきたバジル(チャーリー・コックス)という青年だ。ロンドンのとある宝石店を狙っているという彼は、「その店の鍵を持っている人を知っている人を知っている」のだが、電気系統はお手の物でも、他は何をしていいか、どう計画立てて盗みを企てるべきなのか全く判らない青二才であった。
ブライアンは、若い頃から泥棒の限りを尽くしてきたなうてのメンバーに声をかける。全員が60歳超、いやいや60代なんてまだまだひよっこな位のメンツなのだ。イースター休暇でロンドンの街が動いていないその時期を見計らって、計画は実行される。お宝の山を目前にして、ブライアンは実行から手を引き、残ったメンバーは貸金庫に保管されていた数々の宝石や現金を入手するものの、ブツの売買方法や利益の分け前を巡って空中分解をし、遂には…というオハナシである。
マイケル・ケインを筆頭にして、まあ役者陣の達者なこと達者なこと!最年少のバジル役のチャーリー・コックスとて、役者のキャリアは充分なのである。これらの役者陣が丁々発止でやり取りする面白味と、事件そのものの面白味が重なって、なかなかの作品となっている。この事件、ロンドンで実際にあった話だと言うからなぁ!だから結末も、実在した人物の末路もエンドロールには判ってしまう訳だけれど、その哀切さえなかなかに味わい深い。そして、こういった強盗を働く人たちにも、それぞれの信念があり、曲がりなりにも仁義がある。そういうある種の美学がさりげなくユーモアも取り混ぜて出てきているのが面白い。
年寄りだからといって侮るなかれ。だが、年寄りに独特の(だと思われている)頑迷さや瞬発力の衰えが墓穴を掘ることもまた事実である。そこに少しだけビターな気分を感じるけれど、やはりなかなかに面白かった。
(2021年洋画)