「盗聴」物、シリーズ。これらを「シリーズ」と言っていいものか不明だが、3作あるこれらはそういう鳴り物で、世に出てきたと記憶している。で、2015年に「インターセプション 盗聴戦」という作品を劇場で鑑賞したのだが、それが3作目だったという訳だ。当時の私は「何故この1作目2作目を見逃したのか判らない」と言っており、しかしながら3作とも全く違う話なので無問題だったと言っている。
で、3作は3作とも、「盗聴」をキーポイントとして置く以外には、全く関係が無い単発の作品である。但し、ラウ・チンワン、ルイス・クー、ダニエル・ウーが3作どれにも出演しているが、もちろん3作とも全く別のストーリーなので、全く別人の役柄である。監督は3作ともアラン・マックとフェリックス・チョン(「インファナル・アフェア」の監督である)。本作「盗聴犯 狙われたブローカー」は、第2作目だ。
ブローカーのロー(ラウ・チンワン)は有能であった。彼が有能なのは、株取引の能力が高かったというだけでなく、市場を牛耳る影の組織と繋がりがあったからだ。あってはならないインサイダー取引で株価を操作し、一つの企業の株価を一夜にして高騰させて空売りで儲けを得る。莫大な利益を上げるのにはそんなカラクリがあった。そしてそのカラクリには巨大なバックが付いていたのだ。
しかし、ある晩ローは自分を尾行してくる不審な車を巻こうとして、事故を起こしてしまう。警察が調べた所、その車には盗聴器が仕掛けられており、警察官のホー(ルイス・クー)はローに心当たりを尋ねるが、ローは身に覚えがないとの一点張りであった。ローの態度に不信感を抱いたホーは捜査を開始する。そして、仕掛けられた盗聴器はローの車だけではなく、ローに関わるその他の場所にもあったという事、そしてそこに、何かローの商売に関わるキナ臭いものを感じたのである。
捜査を続ける内に、若い一人の男の行動が怪しまれるようになった。軍人上がりのジョー(ダニエル・ウー)は、大胆で荒っぽい所業で捜査の行手を阻むが、それは彼がある事を目的としてその為に全てを賭ける覚悟であったからだ。それは復讐である。ロー、いや、ローのバックに付いている、巨大で老獪なブローカー組織。正に香港の事業を闇で操作している彼らに対して…。
株のブローカーというものは、知的だけれど胡散臭い。本作では彼らをそのように認定しているようであるが、それは偏見というものだろう。しかしながら、偏見と言えば確かに(個人的な)偏見なのだが、本作で描かれているように、香港の大金持ちの隠れ家にはフィクサーと呼ばれるような年寄り連中が集って、裏で世の中を回しているような気がして仕方がない。本作は荒唐無稽というよりも、むしろ有るかもね…と思わせてしまう妙がある。
ダニエル・ウーは快演。こういうダニエル・ウーが好きでこういうダニエル・ウーが観たかった。それでいうと、3作目を最初に観てしまった事は実は正解だったのかもしれない。3作目のダニエル・ウーは、ただの盗聴オタクのような感じで、1作目2作目を観た後にあの長髪のオタク風を観てしまったらあまりの落差にちょっとがっかりしたと思うからだ。まあこれは単なる私の好みの問題。本作でのダニエル・ウーの役柄は、狂気と紙一重の感じで行動するのであるが、それが実は計算に基づいたものであるというのが良かったと思う。そして幸せな帰結ではないのだが、本懐を遂げたのだと思う。
世の中全て金である。その考えはある意味正しくて、ある意味間違っている。だが本作に出てくる老獪なブローカー達は、恐ろしい事が起こった後でもなお「全てが金」の思想を変えないことだろう。
(2020年アジア映画)
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