面白かった。非常にテンポよく、密度濃く、潜入捜査モノとしてはありがちっちゃありがちなんだけど、これがホントに面白い。ノワール調の緊迫からの痛快なラスト。なかなか。
ストーリーもだけれど、構成や演出がかなり上手いこといってるのだなぁ、と思う。更にいいのは、バリバリの…その人だけで作品が1本作れるような…スター性のある人気俳優で構成しなかったことだ。ジョエル・キナマン、ロザムンド・パイク、アナ・デ・アルマス、コモン…と、ちょっと超一流とは言えないんだけど、そこそこいい味出す鑑賞に充分耐え得る役者を主役・準主役に持ってきている。これが結構ツボだった。気を散らすことなく観ることができるからだ。
FBIの命を受けて、麻薬取引の潜入捜査を行なっているピート(ジョエル・キナマン)。4年越しのそのプロジェクトは、取引の現場を押さえて、これまで近づくことができなかった大ボスの逮捕に至る大事な局面を迎えていた。だが、取引当日に、NY市警からの囮捜査官を、仲間が殺してしまうという失態が起こり、作戦は中止となる。NYでNY市警を殺したらどうなるか…そう、NY中の警官が、犯人探しを最優先とし、犯人を見つけようものなら即報復を行うのだ。その上、殺された捜査官の遺体が、見せしめとして舌を切られていたとなると…。
大戦争になることを予感し、責任を取らせることも含め、大ボスはピートに命じる。ほとぼりが冷めるまで刑務所に服役し、中で取引されている麻薬を仕切れ。なに、5年ほどで出て来られるだろう。
一方、FBIの方にしても4年越しの計画。何としてでも大ボスを挙げなければならない。ピートに指示を出しているFBI捜査官ウィルコックス(ロザムンド・パイク)は、次なる提案をする。刑務所の中で取引されている麻薬に関わる服役者と刑務官のリストを入手せよ。それで大ボスの息の根を止めるのだ。
実はピートは、殺人の罪で以前服役していたものの、模範囚でもあり、FBIとの取引を経て、そこから潜入捜査官となった経緯があるのだ。あんな場所に戻るのはまっぴらだし、FBIが最後まで身を守ってくれる保証もない。だが、このままではNY市警からも身を追われることになってしまう。ピートにはもうその選択しか残されていなかった。それにウィルコックスは、妻子の事は必ず守ると約束してくれたのだし…。
まあここから、お約束のように刑務所内でのシマ争いや裏切り・裏切られ、が発生し、果てはFBIからも見捨てられ、ピートは大博打を打つことになる。という息を呑む展開が待っているので、震えて待て、という感じだ。震えて待つのはその大掛かりなアクションシーンだけでなく、最後まで裏切り・裏切られがどうなっていくのか…?こちらも見ものである。
そう。かなりなお約束の部分がきちんと踏襲されている辺り、緊迫感とは矛盾した表現になるのかもしれないが、安心して観ることができるとも言えよう。潜入捜査官モノとして、よく出来た作品だったと思う。でも一つだけ言いたい。家族のいる人を潜入捜査官にしてはアカンよ。
(2019年洋画)