
死ぬ覚悟で生きるのか、死んだように生きるのか。男の生き様、なんて生易しい言葉では括れない。ともかくも誰にも真似できない壮絶な生き様。
死ぬ覚悟で生きるのか、死んだように生きるのか。これは時として深く自分の心に突き刺さる問いでもある。そしてこの作品では、誰もがビニーに問いかける。「死んでも構わないのか?!」という問いだ。「復帰は諦めろ。命にかかわると医者が言ったろう?」対してビニーは答えるのだ。「どんな命だ?寝ているだけの命か?」

この作品がインディーズ映画として作られたことが信じられない。どんなCGやVFXを駆使したスタジオ作品に比べても勝るとも劣らない、一級品の作品である。

私は、これが実話に基づいた作品であり、実在する人物ビニー・パジェンサをモデルにしたものであることを全く知らずに鑑賞した。ネットの解説などに触れることもなく、ただポスターの、ビニーを演じるマイルズ・テラーのふてぶてしい顔つきが気に入って鑑賞することにしたのだ。あの挑発的な俺様的な顔つき。ポスターの平面から振る舞いがそのまま出てくるような。元々ボクシング映画は好物であったし。
この鑑賞方法が個人的には正解だったため、本作に関するネタバレはしない。とはいっても、多くの媒体でビニー・パジェンサの復活の神話がこの作品の「基礎知識」として取り上げられているので、私のこのささやかな抵抗は無意味であるとは思う。

確実に言えるのは、ビニーの復活劇であると同時に、トレーナーのケビン・ルーニー(アーロン・エッカート)の復活劇でもあるということである。ボクサーとトレーナーの二人三脚物は数あれど、この2人の絆は素晴らしいし、渾身の役作りはそれぞれに感嘆させられる。
まあ、凄い。凄過ぎるよ。マイルズ・テラーは「セッション」も凄かったけれど、「セッション」を超えたと言ってもいい。アーロン・エッカートに至っては、「このハゲ親父誰?」と言われてもやむを得ない体たらくなのに…いや、凄い。

この作品にはショウビズの世界の表と裏が見え隠れしているけれど、それを綺麗だとか汚いだとか言う資格は誰にもない。それに、狂人的とも言える信念を持った男には、彼に商品価値がないと見限って離れて行った人々の仕打ちなんて、屁の突っ張りにもならなかったということなのだろう。闘う相手はただ一人、自分自身なのだから。


(2017年洋画)
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