
「キナタイ・マニラ・アンダーグラウンド」のブリランテ・メンドーサ監督作品。「キナタイ〜」でマニラ警察の暗部を相当に見せつけられていたものだから、本作で起こる出来事をついてもかなり耐性ができていたと言えよう。さもありなん、というか。だが、マニラのスラム街で生きる「普通の人々」がこんな風であるなんて知らなかった!いやもちろんフィクションなのだけれど。

ローサは4人の子供を抱えて、マニラのスラム街で夫と共に雑貨屋を営んでいた。夫はあまり仕事に熱心ではなく、ローサが仕事や生活の殆どを切り盛りしているというよくあるパターンである。
スラム街での生活は楽ではなかったけれど、日々それなりに暮らしていた。近所には賭け事仲間もいる。悪ガキにも目をかけている。そんな日常。その中でローサは、ローサの店は、雑貨屋の店先で麻薬の小売も行なっていたのだ。
「小売」と書いたが、当然密売である。しかし、「小売」と呼べる程、その密売は誰もが知るところであり、日常の生業に溶け込んでいた。ローサの雑貨屋では麻薬を扱っている。それは暗黙の了解である。
ところが、ある晩自宅の雑貨店に警察が押し込んできた。麻薬の密売の情報を得て、ローサと夫を逮捕しに来たのである。抵抗するも、隠し場所から小分けにした麻薬の袋を押収され、もはや言い訳も立たない。子供達と引き裂かれ、ローサと夫は警察車両に載せられ警察署に向かわせられる。

到着した警察署だが、何故か正面からではなく裏の方の奥まった入口から収監される2人。そして取り調べもどうもキナ臭い。そう、彼らを収監したのはマニラ警察の中でも汚職にまみれた警官たちの巣食う部署。つまりこういうことだ。無事に娑婆に出たければ、それに見合った金を工面しろ。

雑多な部署部屋に入れられて、そこで起こる出来事は、暴力団の事務所と変わらない。他の容疑者に行われる激しい暴行も恐怖を煽る。ローサ夫婦がどこに収監されたのかを探し当てた子供達により、金の工面が八面六臂で行われるが、その工面の方法は子供達それぞれであり(ちなみに「子供」といっても本当に「子供」なのは末子だけであり、4人中3番目の子は高校生である)、中には衝撃的な工面の方法もあった。

混沌としたマニラのスラム街の様相と、そこで生き抜くしかない家族の有り様。警察署内でさえカネが全てを支配する。誰がローサを密告したのか、の解も苦味が残るものであった。だがそんな中でも、ローサの逞しさと意地、そして家族の絆をも感じさせられた。ローサも夫も子供達も、他のあらゆる住人達も、マニラ警察の警官たちでさえ、結局この街で生きて行くしかないのだ。

(2017年アジア映画)
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