
「飛行機事故が起こるのは、全知全能の神が存在しないということだ。」
宗教と生と死と贖罪と。重いテーマである。白血病を発症するも教義によって輸血治療を拒む信者とそれを見守る恋人、仕事と偽りカジノに夢中になる男と彼に放っておかれてアル中がぶり返す妻。そのカジノでバーテンダーを勤める男の老いらくの恋(不倫)。姪と過ちを犯した為南米に逃れていたが、金を渡す為に舞い戻ってきた運び屋。

「神のゆらぎ」というタイトルだからと言って、殊更に宗教色が強い訳ではない。確かに冒頭から白血病に侵されたエティエンヌ(グサヴィエ・ドラン)がエホバの証人の教義に従って治療を受けるのを拒んでいる為、周囲に病をひた隠しにしている所、そして看護士である恋人だけがそれを知っていて、愛する人を救う可能性がある医療と、家族ぐるみで信仰している宗教の教義の狭間とで、悩み苦しむ所から始まるのだが、「ゆらぎ」とは恐らくそういう所を指しているのではなくて…人の運命とは何によって決まるのか?人生は信賞必罰なのか?いや、もしも神が運命を決めるのなら、正しいだけでは為されない運命というものがあって、それはもう全く信賞必罰関係なく、ただ神がゆらいでいるからに過ぎなく、もっと言えば神が手を下す事なんて本当は無いのかもしれない。宗教が、とか信仰が、とかそういう事ではないのかもしれない。ということを表しているような気がしてならない。

とはいえ、キューバ行きの飛行機に乗って、それが墜落してこの世を去る登場人物達には、画面上では多少の信賞必罰があるように見せている気もする。だが、もしそうであるなら、誰しもその程度の罪は犯しているはずだ。だから、いつ運命がどうなるかなんて、実際の所は誰にも判らないのだ。そう、もしかしたら神にさえも。

(2016年に観た洋画)