
カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作品。内戦により国を追われたスリランカ人が移民先の地で暮らしていく様を描いた力作。スリランカでの内戦の爪跡、フランスでの移民問題だけでなく、「家族」の在り方も描いている。そしてそう、闘いはどこの地でも起こり得る、ということも。
闘いはどこの地でも起こり得るんだ。それはラストに至るクライマックスのことだけを指しているのではない。自己との闘い、Yes、もちろんそうだ。人生は全て選択と闘いの繰り返しなのだ。あとから思い返すと、そのことがじわじわと効いてくる。

兵士だった自分を捨て、異国の地で新たな家庭を築く。時には戦時のPTSDに苦しみ自己のアイデンティティーを問い質す。家族が危機に瀕した時、封印していた銃を手に取って、ただ一人闘いに挑む。…つまりこれはハリウッド映画でよくあるヒーロー・アクション物とプロットは何も変わらないのだが、それに気付いたのは鑑賞後であった。トム・クルーズやキアヌ・リーブスが演じてもおかしくない役を移民のスリランカ人が演じている。そして、内戦に荒れるスリランカという地の状況と、移民問題を抱えるフランスという地の状況がシンクロして社会問題の提起をしているのだ。

ディーパンは内戦のスリランカから出立するために他人のパスポートを使って難民を装うのだが、その為には「家族」が必要であった。本当の妻子は内戦で失っていたので、ちょうど祖国を離れようとしていた女性ヤリニが…彼女もまたイギリスの従姉妹一家の所に逃げる為「家族」探しに必死であった…見知らぬ孤児の女の子を連れてきたので、彼ら3人「家族」と偽って渡仏するのである。この偽りの「家族」が本当の「家族」になっていく描写も大変丁寧で、非常に興味深い。

闘いはどこの地でも起こり得る。それなら私は、平和な国で暮らす小さな平和を噛み締めて生きよう。しかしもし銃を手にして戦わなければならない時が来たら(もちろん銃は比喩であるが)、その時私はディーパンのように、決断することができるのだろうか?比ぶるべきもない、自身に起こる小さな闘いについても、考えを巡らせる作品であった。
監督は「預言者」のジャック・オーディアール。


(2016年に観た洋画)