
…どう感想(レビューではなく感想)を書いていいのかわからないので、映画.comさんの解説を以下に抜粋します。
タイ東北部イサーンに建てられた仮設病院。かつて学校だったこの病院には、謎の眠り病にかかった兵士たちが収容され、色と光による療法が施されていた。病院にやって来た女性ジェンは、身寄りのない兵士イットの世話をはじめる。病院には眠る兵士たちの魂と交信できる特殊能力を持った若い女性ケンがおり、ジェンは彼女と親しくなる。やがてジェンは、病院のある場所がはるか昔に王様たちの墓だったことが、兵士たちの眠り病に関係していることに気づく。

という解説を読むと(読んだのは鑑賞後だけれど)、非常に幻想的で少しサスペンスの香り漂う斬新な作品のように感じられる。実際に、眠り病にかかった兵士、湖の側の寺に祀られている美女神が人間の姿となって現れる所、非常にファンタスティックだ。だがしかし、これらの描き方が、特別な事ではなく日常的な事のように描かれているので(もちろんそれが「ブンミおじさんの森」でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したタイのアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の持ち味なのであろうが)、あまり幻想的な雰囲気に浸る事ができない。治療法のひとつとして使われている光りが、刻々と色を変えて室内の風景さえも変えてしまう部分などは確かになかなかに幻想的なのである。だが何かもっとインプレッションのあるメッセージが欲しい。そして全編、素朴な、というのともちょっと違う田舎臭さが漂ってしまうのは何故だろうか?


冒頭、謎の眠り病にかかった兵士達が身動きもせずに寝ているベッドが映し出されるが、あー、羨ましい、と思ってしまった。ハードワークの日々だったので。しかしその羨ましさはその後生半可なものでないものに変わる。つまり……ぶっちゃけこの作品は超眠かったのだ!だから眠り続ける兵士の描写の羨ましさといったら!もし仮にあんな風に眠りながら…というか、ベッドに横たわって熟睡しながらこの作品を鑑賞できたなら、どんなに良かった事だろう!不真面目だ、とか、芸術を理解していない、とかの誹りを受けてもいい。それ程この作品は、私史上近年稀に見る、ひょっとしたら初かもしれない位の眠い作品だったのだ。実際に何度も寝落ちしてしまい、私の隣で鑑賞していた人は、少なくとも私が起きている間はずっと寝ていた(向こうも同じ事を思っていたかも、だけど)。

だからと言って内容を何も覚えていないような事もなく、印象に残ったシーンもそこここにあったのが、まるでマジックである。アピチャッポン・ウィーラセタクンマジックと言うべきなのだろう。とはいえ私が彼のイマジネーションの世界に到達するまでにはまだまだ修行が必要なようである。

(2016年に観たアジア映画)