39年間良きパートナーとして過ごし、愛し合ってきたベン(ジョン・リスゴー)とジョージ(アルフレッド・モリーナ)は、周囲に祝福されこの度同性同士で結婚することとなった。しかし、この結婚によってジョージは職を解雇され、家賃の支払いすらままならなくなった2人は、別々に親戚や知人の所で暮らすことを余儀なくされる。それぞれの生活、人間関係…、ゲイである人々の老いてからの生活を描いてはいるが、これらは全て、いつ、誰の身の上に起こってもおかしくない出来事なのだ。
差別と偏見。それはあってはならないこと。無くて当たり前の世界を監督は描きたかったように思う。ジョージが前職で教えていた学校の聖歌隊の学生達にあらゆる人種が配されていたのも、その表れではないかと感じた。
しかし一方で私が切に感じたのは、結婚さえしなければ、ジョージも解雇されることはなく、2人はこれまで通り共に暮らす事が出来たのではないか?という観点から、実は結婚制度そのものが、差別や偏見を助長しているのではないかということであった。よく比喩で使われる「紙切れ一枚」の問題が、これまで上手くやってきていた彼らの生活を一変させる。愛と絆が深ければ、なんぴとたりとも侵すことのできない筈の生活を。そう思うと、「制度」って何だろう?誰の為のものなのだろう?と感じてしまったのだった。
(2016年に観た洋画)