
イギリスからシエナに別々に留学しにきた女子大生2人がルームシェアをして暮らしていたが、その内1人がアパートの中で惨殺され、容疑者として同居していたもう1人の女子大生とその恋人が検挙された。アメリカ人映画監督のトーマス(ダニエル・ブリュール)は、裁判の過程を見ながらこの事件を映画化しようとシエナに滞在する。あの時何が起こっていたのか?事件の真相は?本当に同居の女子大生が犯人なのか?そうだとしたらその動機は?そもそも2人の関係性は?
美しい…美しいなぁ、シエナの街は!もう一度女子大生をやれるなら、こんな所に留学してみたい!シエナ往訪歴は一度きりの私だけれど、もう大分前なのに街並みは全く変わっていなかった。貝殻の形のカンポ広場をそぞろ歩き、カフェやバールで友や恋人と語り合う。朝の柔らかい陽射しの中、小高い丘を背景に広がるトスカーナの平野。雰囲気のあるホテルの屋上で食べる朝食。夕べに街に出れば、暗闇に沈む路地は怪しげで、中世から蓄積してきた想いを伝えてくるようだ。

こんなに雰囲気のある舞台設定で、女子大生ルームメイト間の殺人事件、ヨーロッパの雰囲気を醸し出すにはピッタリのダニエル・ブリュール…と来れば、作品に酔いしれてもおかしくないはずだった。
だが、正直、「普通」だった。一人一人の登場人物の設定や描写、トーマスとの関わり方はそれぞれ良かったと思う。美しい報道記者のシモーン(ケイト・ベッキンセール)。取材の興味を掻き立てる怪し過ぎるゴロのような男エドゥアルド(バレリオ・マスタンドレア)。明るく、そしてアミューズメントに飢えた、カフェで出会った女学生メラニー(カーラ・デルビーニュ)。それぞれとの絡みとシンクロについては、なるほどね、と思う。
しかし、殺人事件という犯罪の謎解き物ではないし、裁判の過程を詳らかにする法廷物でもない。サスペンスなのかラブストーリーなのか、どちらも弱い。様々なエピソードでも単独では弱過ぎるし、かといって全てが最後にはまとまってうねりのようなシンフォニーになる訳でもない。残念なことに全てが表層的なのである。クリエイターとしてのトーマスの苦悩や抱く幻影、堕ちていく過程などは興味深くはあるものの、ガツンと迫ってくる程には描き切れていないのではないだろうか。

ということで、すべからく表層的な作品。このキャストでこの風景で実話というバックグラウンドで、なんでこんな風になってしまったのだろうか?とてもマイケル・ウインターボトム監督作品とは思えない。作中ではトーマスが作ろうとしていた映画作品は結局日の目を見ることがなかったのだが、案外、作っても大した作品にならないと、周りだけでなく本人も予感したのかもしれない。
(2015年に観た洋画)