うん、「シンベリン」だ。シェークスピアの戯曲の。設定こそ現代アメリカの辺境地だが、まごうことなく。
しかし私には香港映画にしか見えなかった。香港テイスト炸裂だ。ありとあらゆる荒唐無稽。無駄にゴージャスなキャスト。簡単に人は騙され、簡単に人を殺す。妙なBGMが妙な所でかかり、それが又マッチしている。
そういう観点から見たら、愛すべき作品である。だが、事前に劇場予告などで得た印象とはだいぶ違っていたので、感情の折り合いをつけるのに混乱した。実際今でも混乱している。どう観れば正解だったのか?本当に納得しているの?自分?的な。
特筆すべきは「無駄にゴージャス」と書いてしまったが、その絶妙なキャスティングであろう。激情に任せる部分と冷酷さを併せ持つ麻薬王と言えばエド・ハリスをおいて他はないし、その財産を狙う美しくも肚に一物ある後妻はミラ・ジョボビッチ以外に思いつかない。あくまで忠実な部下だが真のヒーローでもあるジョン・レグイザモは彼のイメージ通りのキャラだし、イメージ通りと言えば、イーサン・ホーク!!私の愛するダメ男イーサン・ホーク参上!とばかりに、狡い狐の化身のような役を思い描いた通りに演じてくれた。イーサン・ホークはこうでなくちゃ!安っぽいポンコツの黄色いアメ車の運転が似合うこと似合うこと!
そしてもちろん、天使のようなダコタ・ジョンソンも綺麗で可愛かった。特にショートカットにしてからは顔立ちの美しさが引き立っていた。
まあ、とはいえ、ゴージャスなキャストを楽しんで、荒唐無稽を楽しんで、と自分に言い聞かせるものの、かなりの無理矢理感は拭えないなぁ…。それを狙っていたのだ、と思いたいが。そもそも、黒人を20年間父と思って育てられてきた、シンベリンの二人の息子ってどうなの?幼い頃に誘拐されて育ってきたとはいえどこをどう見ても白人…。何かを疑問に思う事はなかったのだろうか?例え山小屋からほとんど出ることがなかったとしても、だ。いやもちろん、戯曲に忠実だったり、監督の思う所が秘められていたりしたんだろうけどさ。
(2015年に観た洋画)