
切なかったなぁ〜。ひどく切なかった。いやもちろんダメなのよ。いくら主演が美男美女だからといって、それぞれの伴侶をないがしろにすることには変わりなく、罪深い話だと思う。
だけど、激しく雨の降る夜の香港の家とその下に停められた車…その中でそれぞれスー・チーが、レオン・ライが、電話をかけあうあのシーン。これこそが20年越しの恋、狂おしい程にそう感じる。そしてスー・チーの部屋にはあの日旅立った彼から贈られた手の彫像が今も…。

1996年年末。新年のカウントダウンを迎えるロンドンのトラファルガー広場。一組のカップルがそこに向かって急ぎ車を走らせている。深い愛で結ばれているように見える2人。だが、急に車は横転し、2人は帰らぬ人となってしまう。
NYでテレビを見ていたデヴィッド(ダニエル・ウー)は、その事故で死亡したのが自分の父親だと知る。しかし、何故父は、香港に出張していたはずの父は、ロンドンに居たのだろうか?それも、車に同乗していたのは全く知らない女の人である。デヴィッドは母を置いてロンドンへ向かう。
そしてロンドンの警察署で女の娘のスージー(ニコラ・チョン)と出会う。2人はそれぞれの親の遺品を受け取りつつ、衝撃的な事実を知る。デヴィッドの父親とスージーの母親はそれぞれに家庭を持ちながら、香港に2人の別の居を構えていたというのだ。
ラファエル(レオン・ライ)とヴィヴィアン(スー・チー)は同じ大学の同窓生。寮生活のヴィヴィアンを巡ってラファエルは恋に落ち、やがて2人は恋人同士となる。時は学生運動が華やかなりし頃で、ラファエル達学生も運動に身を投じ、あるデモ行進の時にラファエルは当局に逮捕されてしまう。更に絆を深め合った2人だったが、逮捕によって将来の道が閉ざされてしまったと感じたラファエルは、パリへの留学を決める。遠く離れていても愛は続くと信じていたものの、距離と時間は残酷で、結局2人は別の相手と家庭を持つようになる。そして20年の時が経ち、偶然再会した2人は、あの頃と同じ気持ちを今も持ち続けている事を確認し合い…。
だが、蜜月は甘美なだけではない。互いに別の家庭を持つ2人。何かの記念日や思い出の日に2人きりでいることは許されない。再びの別れを予感する2人であったが、1996年のあの年末、ロンドンの橋のたもとで引き寄せられるように遭った2人は、最高の記念日であるハッピーニューイヤーを2人きりでロンドンで迎えることにしたのだ。だが、あの事故が起きてしまう…。
監督はメイベル・チャン。自身の出身である香港大学が取り壊される事を知ってこの作品を制作したという。ラファエルとヴィヴィアンの2人の死後、息子と娘であるデヴィッドとスージーが彼らの過去を紐解いていく。そして因縁のように又彼らも惹かれ合っていくというストーリー。

学生時代のキラキラした瞬間の恋の思い出なんて、忘れ難い上にいいに決まってる。それぞれにキチンとした人生を歩んできたのなら尚更。そしてそんな風に恋人との別れを経験した人なら一度は夢想してもおかしくはない話。だから逆にこのストーリーそのものに辟易するとしても仕方がないと思う。しかししかし、存外良かったのだ!何だろう?監督の思い入れがこちらに伝わってきた感じ。そして人生は一本の道として続きながらも、幾つもの「時代」という「地帯」で構成されているのだなぁ、と改めて感じた。
あと、レオン・ライのジャージ姿や、長髪&サロペット(だと思う。フツーにジーンズだったかもしれないけど(笑))も見られます。貴重。
シネマート六本木、香港電影天堂 最終章で鑑賞。
(2015年に観たアジア映画)