
待ち望んでいたロウ・イエ監督の新作!何故待ち望んでいたかというと、私が初めて観たロウ・イエ監督の作品は「スプリング・フィーバー」で、大変衝撃を受け次回作に期待を寄せたものの、昨年観た「パリ、ただよう花」はイマイチどころかイマサン位だったので、この次こそは!との思い入れがあったから。

で、普通に衝撃的でかつスタンダードでステレオタイプだった。「普通に」とか「スタンダード」とかいう言葉は「衝撃的」とは相容れない表現なのだが、日本語タイトルが「二重生活」ときてしまえば、この作品の初見の衝撃度がそこそこ薄まってしまうのは止むを得ないというもの。「ステレオタイプ」については、例えば •女の情念は底知れず恐ろしい とか •金持ちのボンボンはロクでもない とか •子どもに罪はない とか •目撃者は悲惨な末路を辿る とか、基本設定に冒険がないと感じたので、あえて使用してみたのだけれど。


土砂降りの雨の中、浮かれて女といちゃつきながらドライブを楽しむ金持ちのボンボンが、女性を轢き殺してしまう場面から物語は始まる。そして、この事故が、ある男女の罪と罰に関わっていて、意外な展開もありながらパタパタと符合が合っていく。この符合の合い方は華流映画の王道そのもの。但し、ロウ・イエ監督にしてみれば、本来の華流の方ではないが故、多少よちよち歩きの感はあるが。

どうしても「スプリング・フィーバー」の衝撃に比べてしまうので、斜に構えた書き方になってしまうのだが、この作品は、これはこれで全く悪くない。メロドラマに転んでしまったというきらいはあるものの。狂おしい、人としての情念の描き方はじわじわと胸に迫ってくるし、ポイントとなる日には必ず土砂降りの雨が降る、などの演出も好きだ。主要登場人物が美男美女…というか厳密に言えば味のある顔…なのも良かった。

が、しかし…。自他共に認める「ダメ男」好きで、「ダメ男」の「ダメ」な行為については擁護の言葉を100も200も持っている私でさえ、エンドロールの時には心の中で呟いていた。
…こんな男、天罰が下っちゃえばいいのに。
(2015年に観たアジア映画)