「ダラス・バイヤーズクラブ」

マシュー・マコノヒーが圧倒的な存在感で第86回アカデミー賞主演男優賞を獲得したこの作品であるが、賞獲得が決定する前に見た劇場予告編で既に鑑賞意欲は高まっていた。だから、ダメ〜な感じを最後まで貫いてのマシュー・マコノヒーかと思っていたら、そんな事は全然なくて、むしろ社会問題を提起するような作品。こちらの勝手だけれど、ダメ〜う〜んダメダメ〜（チャラいという意味ではないよ）、というのを期待していたのでその点は肩透かし。
でも、アメリカのクスリ社会、医療、同性愛の問題点を、鋭くえぐった作品として観れば、たいした佳作である。ダラスの暑い乾いた雰囲気とあいまって。

粗筋です。
実話に基づいた作品。1985年、テキサス生まれの電気技師ロン・ウッドルーフ（マシュー・マコノヒー）は賭けロディオの賭け金をちょろまかしたりするチンケな男であったが、ある日職場で倒れ、HIV陽性と診断される。医師によると余命は30日。そしてアメリカには認可された治療薬が少なく、治療方法は限られている、と。

自分の身に起こった事をにわかには信じられないロンだったが、病院で同室になったゲイのレイヨン（ジャレッド・レト、この役で同じアカデミー賞助演男優賞を受賞）から、別の治療薬の入手方法を知らされ、国境を越えてメキシコまで代替薬を手に入れに行く。だが、アメリカで認可されていない薬を使う事は違法であり、その壁は高い。ロンは持ち前の小器用さを活かし、アメリカに薬の密輸入を行うが、その内、エイズ治療薬の大量の密輸入を思い立ち、無認可の薬やサプリメントを売る「ダラス・バイヤーズクラブ」を設立。このクラブの会員になると、安い月額料金で新しい薬を手にすることができるのだ。ダラスのモーテルの一室に設けられ、同じエイズに侵されたレイヨンと共に運営されるダラスバイヤーズクラブは、非合法ながらも栄えていくが、やがて司法の手が迫り、ロンは捕えられる事となる。

21kg減量して役作りをしたという、マシュー・マコノヒー。確かに凄い。凄過ぎる。だが彼は一体何処に行くのだろう？という感は否めない。いっときは「サハラ 死の砂漠を脱出せよ」のような所に行くんではないかと危ぶんでいたが（大きなお世話だけど）、そうはならないみたいで少しホッとしてはいるものの、こういう役が続いたらそれはそれで…。まあ、いずれにしても、力の入った役作りでした。

それから、ジャレッド・レト。この人は「レクイエム・フォー・ドリーム」の印象が私には強過ぎる。しかし大好きな役者。で、この作品で流石の開花。というか元々花開いていたんだけどね。やってくれたな、という嬉しい気持ちになりました。


(2014年洋画)