東京国際映画祭では、コンペティション作品以外にも幾つか鑑賞できた。
チケットのソールドアウトで逃した作品も多かったけれど(あと、きっとすぐロードショー公開するであろう作品は敢えて省いたりとか)、結構面白い作品に出会えたと思う。
この「魂を治す男」は、その中では少しイマイチだったかも。もちろん悪くないんだけど、他に比べると弱い、というか。
彼が治してきたのは、結局魂じゃなかったよね?いや、でも結局魂なのか?その辺り暗喩があったのかもしれないけど、私には解らなかった。
東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門アジアン・プレミア。サンセバスチャン国際映画祭コンペティション部門出品作。フランス映画。
フレディの亡き母は、手で触れる事によって病の人を治す、ある種奇跡のような秘技を持っていた。ずっと患者を診て来たのだが、彼女亡き後フレディの父親も近隣の者達も、息子である彼に後を継いで欲しいと願っていた。なぜなら、まだ未知ではあるが、母の技能を引き継いだのは息子だけに違いないのだから。しかし、フレディの方はどうもそんな気になれない。何とは無しに人生に虚無感を抱え、いい年をしてトレーラーでのその日暮らしをしている。
ある日、バイクを運転中、犬を追って飛び出してきた少年と接触して事故を起こしたフレディ。少年は植物状態になってしまった。何とか少年の意識を回復させたいと願うフレディは、自分にもしも母のようなその力があったなら発揮できないものかと、少年の枕元にひざまずき、全身全霊を込めて少年に触れる。
少年には何の変化も起こらなかったが、その時を境にフレディは母と同じように、患者を診る事になった。そしてどうやら他の人達には彼の力は通じるようで、やがて彼に診てもらいたくて長い列がトレーラーハウスにできるようになる。
もしこの作品が、心の治癒、という事で何かを訴えたかったのなら、うーん、ちょっとカタルシスは無かったかな。作品の風景と同じように、乾いた感想を持ってしまった。
(2013年洋画/東京国際映画祭)