2013年東京国際映画祭。今年はコンペティションを中心に観ると決めていた。もちろん、土日と平日夜の上映しか観られないからコンペティション出品作品を全部観る訳にはいかない。でも、好みかそうでないかに関わらずなるべく予定が合う多くの作品を観たつもりである。家族に泣いてお願いして(笑)家を空けさせてもらった。
で、この「ラブ・イズ・パーフェクト・クライム」。東京国際映画祭コンペティション作品。フランス映画である。ラブ、と付く題名でおフランスではあるが、ラブストーリーではない。ヘビースモーカーの大学教授が殺人事件に巻き込まれていく、というお話。
ま、フランスのサスペンス映画なので、私にとっては「火サス」である。常日頃からフランスのサスペンス映画は「火サス」みたい…、と思ってた。しかし、この作品は「火サス」であって「火サス」ではない。もっとずっと大人で謎めいていて一方でキャラが立ってて、そして救いがない。
主人公の大学教授は、文学を専攻している。彼はヘビースモーカーで、郊外の山中に家を持っていて、妹と二人暮らし。両親を早くに亡くしている。フランスの大学教授がみんなそうなのかは知らないけど、気に入った教え子とよろしく関係を持ったりしている。こういう女にだらしない所が災いしてか、同僚からの評判はあまり芳しくない。
ある日、彼の教え子の女子大生が失踪した。何の手がかりもなく、警察も動くが、行方は杳として知れない。身の上を案じた母親が、彼の所にやって来る。女子大生に全く似ていない、若い母親である。それもそのはず、彼女は後妻で女子大生の義理の母だったのだ。
そうしてはならない、と判っていながら、彼は女子大生の母親に惹かれていく。娘の事を話し合ったりそうこうするうちに、いつか二人は親密な関係になっていく。そして…。
結末が意外な所も、更にラストが破滅的な所も、キャラクターが尋常じゃない所も、ただの「火サス」とは違う。
観終わってすぐは、何なんだこれは!?と思ったけれど、今思い返すとなかなかに味のある作品だった。
監督はアルノー・ラリユーとジャン=マリー・ラリユーの兄弟。主演はフランスで人気を誇るマチュー・アマルリック。
(2013年洋画/東京国際映画祭)