2013年1月公開。待ってました、のイー・シントン監督作品。彼の作品では、「ワンナイト・イン・モンコック」は強烈過ぎて爆裂に好きだったし、「忘れえぬ想い」は香港ラブストーリーの中では私的には三本の指に入る程。
もちろん、「プロテージ/偽りの絆」や「新宿インシデント」の傑作もある。
更に又主役がダニエル・ウーとルイス・クー。香港若手俳優二大イケメン。「単身男女」のキャスト。ああ、胸が高鳴る!
…とはいうものの、実はちょっとビミョーでした。悪くはないけど小さくまとまっていて、前述作品のような魂の揺さぶりがなかった。あの、私が好きな香港映画の作品によくある、見終わった後のぐったりするような快感もない。特に射撃物なので、他の香港射撃物作品の既視感もある(「スナイパー」などの)。
「トリプルタップ」とは、三発の銃弾が標的の同じ場所に命中するその技術。「ダブルタップ」という、ニ発の銃弾が同じ場所に命中する技術も凄いのだが、更にそれを超えている。
チョン警部(ダニエル・ウー)は、「ダブルタップ」が得意の、署内でも名を馳せた射撃の名手。ある射撃大会で好調を保つものの、「トリプルタップ」の技術を持ったクヮン(ルイス・クー)に優勝をさらわれてしまう。
そのクヮンは、大会後に偶然通りかかった高速道路で、現金輸送車の強奪場面に出くわし、犯人と警察官一人を射殺してしまう。たまたま大会の帰り道だったので、銃を持っていたのだ。
クヮンは投獄されるも、無罪で釈放される。しかし、彼の行動を怪しんだチョン警部は、株の投資家であるクヮンの資金繰りなどに疑いを持ち、捜査を開始するのだが…。
チョン警部が、射撃の技術に優れたクヮンを好敵手と認めながらも、捜査に私情を挟まないようにしようと努める苦悩。クヮンが誤って警察官まで射殺してしまった自らの行動に対する苦悩(もちろんそれには誤り以上の理由があるのだが)。この二つの内省的苦悩が、物語に膨らみを持たせる。
追い詰められたり、(静かに)苦悩する男の姿を描かせたらやっぱり上手いね。
そうか、確かに上手いわ。佳作だ。そこはきっちりイー・シントン監督仕上げてるんだ。
脇を固める俳優も、香港映画好きにとっては贅沢。ラム・シューにチャップマン・トゥー、アレックス・フォン。
あー、なんか又ビデオで観たくなりました。
(2013年アジア映画)