
「J.S.A.」を凌ぐ作品!との謳い文句に惹かれて観たものの、全然凌いでませんでした。南北朝鮮対立物、スパイ物、なので、裏切り、密告、広義な意味での処刑、銃撃戦、と何でもアリなのですが。
ファイルと言えば、「オデッサ・ファイル」でも有名なように、スパイ物、と決まっている訳で。ヨーロッパではこのベルリンが、南北朝鮮の諜報活動の重要な拠点になっています。
主人公のハ・ジョンウは、北の諜報員としてこの地に滞在しており、美しい妻のチョン・ジヒョンは、大使館勤務。
「ブレス」で初めて観たハ・ジョンウは、相変わらず眼光鋭く、心に渇望を秘めた北のスパイがよく似合っていますが、「ブレス」の時に感じさせた痺れる魅力は薄れています。喋るハ・ジョンウを観るのは久々、というせいもあるのかも。やはり、男は黙って○○ビールという所か(古い)。
現在も繰り広げられている諜報活動の実際として、多分最も身近なものの一つがこの南北朝鮮の諜報活動なのだろうけど、密告や自らの持つ疑念によって愛するものさえ疑わなければならない、その非情。その部分は純愛映画の香りさえ漂わせ、なかなか良かったのだけれど、ただでさえ複雑な相関関係があまりにもぐちゃぐちゃと転がって行くので、雑駁感が拭えない。
ただ一つ解った事は、諜報活動の名の下では、どんなに何かしらに尽くした人間でさえも、命の重さは紙切れ一枚よりも軽い、という事だろうか。
(2013年アジア映画)