いわゆるジェイソン・ボーンの「ボーン・シリーズ」にそれ程思い入れはなく、3部作の内でも観た作品は「ボーン・アルティメイタム」のみ、のこの私が、何故今になってこの「ボーン・レガシー」を観たいと思ったのか…それは、きっと何も難しいことは考えずに、アクションの快楽に私を連れて行ってくれる、と思ったから。「ボーン・アルティメイタム」は初めてマット・デイモンのことを「なんてカッコイイ!」と感じた作品だったしね(いや、いつものもっさりとした人の好い感じのマット・デイモンはそれはそれで好きなのよ。インテリだし。言うまでもなく“ダメ男好き”の私のタイプではない、というだけで)。
で、結果として、冒頭から中盤まではすごく良かった。正にアクションの快楽に連れて行ってくれたし、謎のクスリの存在感も興味を引き付けるものだった。アラスカの山中での無意味な(その後の展開を考えると無意味としか言いようがない)訓練とか、孤独にサバイブする強靭な肉体と精神とか。寡黙な仲介者、無人機による攻撃、野生のオオカミとの一騎打ち、ラボでの無差別殺戮、思わせぶりなエドワード・ノートン(笑)、…全てが、スパイもの、CIAものとして、わくわくどきどきでぐいぐい引っ張って行ってくれました。
…が。後半、バンコクのロボちゃん(と勝手に命名)が出てきたあたりから急速にテイストがB級以下に落ち込み…。だって、CIAが、というよりエドワード・ノートンが、満を持して繰り出したとっておきの秘密兵器、最新の人間兵器が、感情を持たない恐ろしい存在だという触れ込みまであって…あれだよ?たいして強くないし、素人の女にヤラレルか?フツー?
でもって、ラストでマニラから脱出した船の上で、これからどこ行こっか、うふふ、いやーん、ハートマーク、みたいな終わり方って何なの?やはりスピンオフ作品って(まあ厳密に言えばスピンオフではないのだろうけど)、決して本作を越えられないし、期待したらイマイチっていうお約束がまんま踏襲されてしまったな、と。ぐいぐいとした引っ張り方がそれまで良かっただけに本当に惜しまれます。
アーロン・クロス役のジェレミー・レナーは2級線だけれどなかなかのイイ男だし、聡明な化学者役のレイチェル・ワイズは相変わらず美しく素敵でした。うん、ジェレミー・レナーはトップクラスっぽくない所が逆にイイかも。「ハート・ロッカー」も良かったしね。一層好きになってしまったかもしれません。
(2012年洋画)