
スペイン内戦後の人々の生き方が色濃く反映されている作品。勿論フィクションだが、内戦時、敗戦側の共和国を支持していたカタルーニャ地方は、その後40年間もカタルーニャ語を使うことを公式に禁止されていたりした史実がある、そんなカタルーニャの当時の現実を背景にしている。
「ブラック・ブレッド」とは正に黒パンのことで、当時、富裕層か貧困者か、で、食べるパンの色は違っていた。貧しい者は、混ぜ物の沢山入った黒パン=貧者のパン。富める者は精製された小麦で作られた白パンを食す。当時、スペインでは黒パンは自分で作るものであり、白パンは購入しなければ入手できないものであった。作中でも、主人公の少年アンドレウが警察署でパンを振舞われる時、白パンに手を出そうとして、「あんたはこっち!」と黒パンを与えられるシーンがある。

この「ゴシック・ミステリー」ともいうべき作品は、このような時代背景、このような生活を基に描かれる。冒頭、馬車を駆る御者が何者かに惨殺され、馬車に乗っていた息子ともども崖下に落とされ、アンドレウにその惨状を発見される。彼は親友の死の瞬間を目撃してしまったのだ。親友が忌の際に遺した言葉、「ピトロリウア…」。それは、その地方で森の中の洞窟に潜んでいる羽のある怪物のことであった。共に殺された親友の父親と、アンドレウの父親は旧知の仲であり、同じ左翼として当局に目を付けられている同士であったが、彼らが営んでいる「鳥の鳴き声大会」出品のための小鳥たちの飼育のことを考えると、何という因縁だろうか。
誰が彼らを殺したのか?その謎解きもそこそこに、アンドレウの父親が当局から逃れるために身を隠し、アンドレウは工場勤めの母親と離れて従兄弟達と祖母の家で暮らすことになる。その地で起こる様々な出来事、父親の秘密、母親の秘密、従妹の秘密、療養所の青年との出会い…。様々な人間関係が絡んで、物語は(そう、本当に“物語”なんである)進行していくのである。

同じスペインで、同じ内戦時代を背景とした「パンズ・ラビリンス」と比較される作品だけれど、この作品にはファンタジーの要素は一切ない。伝説の怪物は、本当に村人の無知からくるものなのか、現実の忌まわしい事実を隠すために語り継がれているのか、と言えば、むしろ後者なのである。本当に、生きていくだけで精いっぱいの時代、現状に足掻いても報われない時代、そんな中で、何を選択して、何を捨てるべきなのか、その決断こそが人生を左右する、という、非常に冷淡な現実的な逸話が散りばめられている。それに気付いて少年の日々を脱却していくアンドレウのラストシーンが、救いのない、嘘で固めた大人たちの仲間入りをしていく儀式のようで、やるせなく切ないのである。
(2012年洋画)
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