お子様は見ちゃダメ。清潔で清廉な心根の方も見るのはあまりよろしくない。
中世ヨーロッパの暗黒で残酷な部分が好きな方のみ、見てもよし。
ある僧院の門前に捨てられた赤子が、やがて厳格な修道僧として成長し、数々の懺悔を聞き入れ、時には信者を裁いていくのだが、その無慈悲とも言える戒律に対する厳しさが、やがて悪の力によって導かれた時、自らのたがが外れてどうにも救いようの無い結末となる。
暗くておどろおどろしい雰囲気。そして正に孤高の破戒僧にぴったりのヴァンサン・カッセル。いや、どんなに孤高で禁欲的でも、こいつが肉欲にはまらない訳ないだろう、と、思わせてしまう所さえも適役。
ちょっとしたネタバレにつながる私の解釈。
アイスキュロスの母親殺しの悲劇三部作『オレステイア』。
それは人間の意志とはかかわらぬ神=偶然の介入によって悲劇を生みだしていくギリシア的倫理。
そこにはキリスト教的教会が全く介在しない。これは、キリスト教僧院で育った主人公の二律背反を表しており、この作品の根底に流れる象徴的な暗喩ではないだろうか。
(2012年洋画)