![ヘルプ~心がつなぐストーリー~_c0118119_16444595.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201205/06/19/c0118119_16444595.jpg)
素晴らしい作品でした。一言でいえば、「ペンは剣よりも強し」というテーマなのだけれど、重たくて暗い展開になりがちな人種差別問題を、軽妙に、ウィットを込めて描いている作品です。いつの時代にも変わらない(笑)女同士のどろどろも逆に楽しい。
少しネタバレです。
南部生まれ南部育ちのスキーター(エマ・ストーン)は、大学生活を終えて、物書きになる夢を携えながら、故郷に帰ってきた。第一志望の出版社に入社するために実績を積もうと、新聞社にキッチンコラムのゴーストライターとして就職する。
スキーターは、自分が今いる環境に疑問を感じた、1960年代、公民権運動が盛んになってきてはいたが、まだまだ南部の田舎町では人種差別意識が根強く、スキーターもそんな中の白人富裕層家庭に育ってきていた。例えば黒人女性の就職先は生まれながらにメイドと決まっていて、そのメイド職も、白人の子供を赤ん坊の頃から育てていたとしても、当然のように親しい間柄には見てもらえず、白人の富裕者からは、自宅でメイドと同じトイレを使いたくなくて、家の外に黒人専用のトイレを作る運動が起こるほど。「自分が違和感を感じたことを書きなさい」という教えを胸に、この状況に強い違和感を感じたスキーターは、メイド達エイビリーン(ヴィオラ・デイビス)やミニー(オクタヴィアス・スペンサー)の協力を仰ぎ、黒人メイドがいかに差別的な扱いを受けてきたかを本にすることに決めた。
![ヘルプ~心がつなぐストーリー~_c0118119_16451528.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201205/06/19/c0118119_16451528.jpg)
雇用先からの報復を恐れて、最初はエイビリーンもミニーも協力を渋っていたが、あることをきっかけに取材に協力するようになり、やがて協力の輪は広がり、沢山の黒人メイドの証言から、白人スノッブ女性真っ青の「ヘルプ」という一冊が出来上がる…。
タイトルの「ヘルプ」は、当時の黒人メイドのことをこう呼んだから。彼女たちが差別される背景には、勿論当時の世相があったのだけれど、同様に、白人スノッブ女性達のおどろおどろしい性格もかなり影響していて、嫌味な鼻持ちならない振る舞いが、最終的にはガツンとやられて溜飲を下げるための見事な布石になっている。
![ヘルプ~心がつなぐストーリー~_c0118119_16454110.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201205/06/19/c0118119_16454110.jpg)
エンドロールの最中…私は個人的に気付いたことがあり、我を忘れて泣いてしまいました。本当に、しゃくりあげる程。実は昔、私もペンによって息子のことを救っていたことがあったのだ、と気付いたのです。この作品を観るまで、全くそんなこと、思ってもみなかったのだけれど。自分がかつてしたことが、そこに繋がっているとは明確に気付かなかったのだけれど…。あの時、私は確かに、息子を救うことになるとは知らずにそれをやり遂げ、ある結果が。これまで、「ペンが剣よりも強く」そして(象徴としての)ペンを握ったのは私だったなんて、今の今まで全く気づかず。それに気付き、この作品が単なる映画の一篇とは到底思えなくなりました。私にとって、「違和感を感じたことに」立ち向かう、そのことの大切さをもう一度気付かせてくれた、この作品は正に心に残る作品です。
(2012年洋画)