人生はビギナーズ

父親役のクリストファー・プラマー（好き）、友達以上恋人未満のメラニー・ロラン（かなり好き）、主演のユアン・マクレガー（大好き！）の、役者粒揃いの作品なのに、「サムサッカー」のマイク・ミルズ監督なのに、こんなにも予告編通りの作品で、いいんでしょうか？ある意味驚きを禁じえない位、予告編のまんま。それ以上話の進展がある訳ではなく、それ以下の期待の裏切りすら、無い。

以下ネタバレです。






３８歳、独身、職業アートディレクター、人生に対してどこか臆病な部分を持っているオリヴァー（ユアン・マクレガー）。心の拠り所は、（きちんと回ってはいないのだけれど…）ジャケ写デザインなどのアートの仕事と愛犬アーサー。ある日、７５歳で癌を告知された父ハル（クリストファー・プラマー）が、自分がゲイであることをカミングアウトする。長年連れ添った妻（オリヴァーにとっては母）が死んで、余命が限られてきた中、自分の人生、自分の気持ちに忠実に生きようと決意したからだ。

突然の父の告白に戸惑うオリヴァー。父が、ゲイの恋人を作り、ゲイ（ウケする）ファッションに身を包み、パーティーに出掛けて友人を作り、自分らしく人生を再度謳歌していくことを、複雑な心境で見つめるオリヴァー。そう、父は父らしく最期まで生きて行って欲しい、と思う反面、これまで騙されてきていた息子である自分の身の置き場の無い感情を持て余している。特に、妻である母は、ゲイを隠して結婚生活を続けていた夫のことをどう思っていたのだろうか？毎日毎日、父が帰宅すると御座なりのキスのやりとりがあり、あんな日常ひとつとっても、結局の所はどういう気持ちだったのだろうか？自分自身が愛に臆病で、恋人との付き合いが長続きしないのも、実はこういう家庭環境が原因ではなかっただろうか？


やがて父は亡くなり（この辺りの介護の描写が、オリヴァー設定と同世代の向きには胸に響くでしょう、見事！）、喪失感で堪えられなくなっていたオリヴァーの前に、アナ（メラニー・ロラン）が現れる。アナはオリヴァーの喪失感を理解し、心を慰め、二人は恋に落ち、共に暮らし始めるが、オリヴァーのこれまでの家庭環境による性癖なのかどうか…？いまひとつ踏み込み切れない恋の過程に、二人の間に徐々に隙間風が吹いてくる。
アナまでも失うことになったら…？いや、それは自業自得なのだ、と、悶々とする中、ああ、３８歳の男が、こんなうじうじしちゃって…あんな美人で性格のいい女性をみすみす逃すことになるなんて…あほちゃうか？の観客のストレスをよそに、結局は、「自分の人生を自分らしく生きろ、人生は常にビギナーのつもりであたれ」という、父の最後の教えがオリヴァーの背中を押すのだ。うん、めでたし、めでたし…なのだろうか？）

(2012年洋画)