
こういう作品を「クライム・コメデイ」とジャンル分けするのですね。あまり知りませんでした。まあ確かにコメディっちゃコメディなんだけど、どっかんどっかん笑わせる訳でもなく、むしろ、「雲の上に住む人」と「下層に住む人」のシニカルな現実を描き出した作品として、非常に完成されたものだと思いました。勿論、一寸の虫にも五分の魂、というか、お約束の下克上もあるのさ。
ニューヨークはマンハッタンで、超豪華な高層マンションに住む住人と、彼らをお世話するスタッフのオハナシ。マンハッタンの一等地にそびえる65階建てのビル「ザ・タワー」は、色々な意味で成功した人物しか住むことができない。しかし、そこに住むことができたなら、それは超セレブの超楽園。何故なら、あらゆるジャンルのプロフェッショナルが、24時間体制でお世話をするのが「ザ・タワー」の売りだから。
この「ザ・タワー」でマネージャーとして君臨するジョシュ(ベン・ステイラー)は、自身の仕事にプライドを持ち、日々業務に邁進していた。いい加減な義弟(臨月の妹の夫)チャーリー(ケイシー・アフレック)や、親友でドアマンのレスター(ステファン・ヘンダーソン)、前歴がどこかと問えば「バーガーキング」と胸を張って答えるエンリケ(マイケル・べーニャ)や、プエルトリコから移民してきたオデッサ(ガボレイ・シディベ)達を部下に従えながら。
ジョシュは、各セレブな住人達にも好かれ、頼りにされていた。特に、大富豪のアーサー・ショウ(アラン・アルダ)には。将来は、カリブに買ったホテルのオーナーにならないか?などと声をかけられ、いい気分で仕事を進めていた。そう、アーサーが実は稀代の証券詐欺師で、FBIから拘束されるまでは…。

アーサーに投資目的で社員の年金を全て預けていたジョシュ。勿論、その年金は返ってこない。アーサーにとってはそんなものはした金でも、タワーに勤める彼らにとっては全財産。ドアマンのレスターは絶望から自殺未遂を起こしてしまう。いきりたったジョシュは、仲間を集って、アーサーの隠し財産を奪い取る計画を立てる。チャーリー、エンリケ、オデッサ、そしてタワーに住んでいたものの(つまり“あちら側”)、リーマンショックでイェール大卒にも関わらず無職で破産してしまったフィッツヒュー(マシュー・ブロデリック)をメンバーに加え。但し、素人集団で犯罪とは無縁の輩しかいない状態なので、ここにジョシュの幼馴染のスライド(エディ・マーフィ)を加える。前科者の彼なら、きっと上手くやり抜いてくれるはず…。そう、計画は完璧だった、はず。

FBIの女捜査官クレアはティア・レオーニ。「天使がくれた時間」以来、私の大好きな女優さんである。彼女が豪傑な女捜査官をきびきびと演じる所がスパイスとなっていて、素晴らしい。きびきびだけじゃなくて、酒が入るとでろでろ、なんだけど。ジョシュの仲間やクレアがそれぞれの持ち場で生き生きと演技し、いいハーモニーを奏でている。隠し金庫を見つけたり、でもそこは空っぽだったり、実はお宝は意外なアレだったり…と、二転三転する展開も、テンポが良くて飽きさせない。クライム・コメディじゃなくっても、ただのコメディでも、私的には百点満点。
でもね、実は2回程涙してしまったんだ。タワーの従業員でつい三日前に弁護士資格を取ったばかりの若い娘が言う「サメは生まれながらにして凶暴なのよ」と見えを切る所と、刑務所に送還される車の中で「あのセリフを言ってやれよ」「チップはいただかないことになっております」のシーン。なんで泣いちゃったんだろう。市井の仲間が頑張って成り上がっていく、という話が、きっと私は好きなんだね。
(2012年洋画)
htmx.process($el));"
hx-trigger="click"
hx-target="#hx-like-count-post-17608152"
hx-vals='{"url":"https:\/\/tokokonats.exblog.jp\/17608152\/","__csrf_value":"881926f58204c246f338382dcfb20ec8024a9e7eea7367d7fa66d515be61b3887e2f2bc5245faee2e914e81b6550f436a0f76fe984e85885925bd53d63969710"}'
role="button"
class="xbg-like-btn-icon">