
驚いた。年末に凄いものを観てしまった。これが2011年の本当のオーラスではないのだけれど、オーラスにしてしまってもいい位。最後の最後に本当に凄い作品を選んでしまったものだ。
自分の子供を一度でも産んだことのある女性なら、衝撃のあまり、エンドロールが終わってもしばらく立ち上がれないのではないか?
亡き母の遺言に従って、母のルーツ探しをする二人の双子の姉弟。謎が解かれるにつれ、それは母のルーツ探しなどではなく、自分たちのルーツ探しであるということに気付く。そして…。
この結末は、全ての謎が解かれたものの、これでいいのだろうか?という、後味の悪さ、悔いさえも残る心の痛みを残すものである。

少しネタバレです。

母、ナワル・マルワンが死んだ。双子の娘と息子を残して。中東からカナダへ逃れて静かに密やかに生活をしていたナワル。その母の遺言を双子の娘ジャンヌと息子シモンが聞くところから話は始まる。母の遺言はまるでミステリー。最初はジャンヌが単独で、そして次にはシモンも共に、母のルーツを探りつつ、遺言に遺された謎を解くため中東に旅立つ。母親としては、決して温かで優しい、心を開いた女性ではなかったけれど、彼女のために。そして、ナワルが若い時に息子を出産していたこと、昔中東で政治的なことが原因で服役していたこと、服役中に起こったこと、…などが次々と明らかにされていくのである。
旧約聖書の昔から、特異的であるにも関わらず、普遍的な事象が題材。こんな、本当に、魂の叫びのような作品があっていいのだろうか?あまりにも重たく、あまりにも心揺さぶられる。ナワルの鉄の意志をもってしても、この結末はあまりにも残酷である。
(2011年洋画)