
アル・パチーノの姿が前面に出ているからといって、アル・パチーノが活躍する話ではありません。という認識をしておかないと何だか騙された気になる作品です。じゃ、そういう認識を持って観たからといって、たいして面白くなる訳でもないのですが。別に犯罪の隠ぺいもそんなコンフィデンシャルな種類のものではないし。
ただ、ニューヨークの郊外、末期症状を呈した公営アパートでの出来事の描写はある種リアルで、街の成長と停滞という社会文化的な考察を満足させるに足る作品でした。究極、環境が人を創ってしまう、という話かな。短く言うと。

以下ネタバレです。
殉職した父の後を引き継ぎ刑事となったジョナサン(チャニング・テイタム)。何故かいま居住している場所の近くではなくて、かつて自分が少年時代を過ごした街の付近が管轄である。
彼もかつて育ったことのある、公営住宅クイーンズ・ボロは犯罪の巣窟。彼はフラッシュバックで時々過去を思い出しながらも、清廉な警察官として生きようとする。
しかし、実は彼は少年時代にここで殺人を犯しており、それを隠蔽してくれたのが当時父とペアを組んでいたスタンフォード(アル・パチーノ)。彼の赴任は全て仕組まれたもので、スタンフォードの権力争いのためにジョナサンは利用されることになる。地縁と恩義の狭間でジョナサンが最後に取った行動は、スタンフォードに屈することなく、自らの手でけじめをつけることだった。

この作品を鑑賞した当時は、地縁の将来に渡る影響やそれに伴う人間関係のことなんか、何もわかっちゃいなかった私。でも、今こうしてその渦を目の当たりにすることになってみると、感慨深い作品ではあるのだ。
(2011年洋画)