
「イザベラ」のパン・ホーチョンが監督である。香港の鬼才、と言われていて、映画祭で彼の作品が上映されようものなら、すぐにSoldOut。それほどまでに根強い人気を誇っている通好みの監督。ただ、私は「イザベラ」しか観たことがなく、それも思っていたほどではなく、ふ~ん?という印象だったので、「あのパン・ホーチョンが」という修頭語には疑問でした。しかし、この「ドリーム・ホーム」は「あの」という称号が相応しい。幼い頃の育ち方や、香港再開発に纏わる思い出から、マンションの購入にこだわる一人の女。それは、思い出の中の家族に捧げるために、海の見える、ある特定の高級マンションでなければならない。「ビクトリアNo.1」。しかし、現実の荒波は厳しく、香港の家賃の高騰に一介のOLの彼女の軍資金はぎりぎり足りず、目標としていたマンションは僅差で他人の手に渡ってしまうことになるのだ。遂に女が取った行動は…!

香港のとある高級マンションで一夜にして12人の猟奇惨殺死体が。映画の殆どを殺人シーンが占めているという異常さ。いくら香港映画と言えども、これは凄い。常軌を逸した行動の筈が、女にとってはある一定のルールやこだわりに則って展開されていることに気づくと、意外と几帳面な彼女の性癖に、段々と共感してくるのが不思議である。
どんなことをしても手に入れたい「ホーム」って何だろう?「家なんか買わないよ、離婚できないじゃん。」と言ってのけて、周りの友人達をドン引きさせた経験のある私には、この偏執的なまでの持ち家に対するこだわりは色褪せた見栄にしか見えないのだけれど、それでもきっと「そうまでして手に入れたいもの」があるヒロインは、幸せなのだ…たぶん…!
(2011年アジア映画)