
サブタイトル通り、哀しいお話でした。モーツアルトの実姉ナンネルは、才能がありながら弟の陰に隠れて存在し、最期は盲目で死んでいくというのですから、救いのない話だと思います。権力を持つ傲慢な男に翻弄される部分も哀しかった。これでナンネルが、たとえばカミーユ・クロデールのように、強気に生きて狂気に足掻いていく、というのならまだしも、最後まで日陰の花で終わっていくのです。現代に生きていて何の才能もないのが申し訳ない。

18世紀中期、一家で演奏をしながら各地を旅で回っている父・母・弟ヴォルフガング・そしてナンネルは、当時の社交界の寵愛を受け、各地で歓待されながら演奏旅行を続けます。しかし、歓待されているのは、そして真の楽童として父から評価されているのは弟のヴォルフガング=モーツァルトであり、ナンネルは才能がありながらも、ヴァイオリンさえ弾かせてもらえません。
又、フランス王太子ルイ・フェルディナンと恋に落ち、彼に進められるまま作曲に情熱を傾けますが、所詮女の仕事、と、世間からは歯牙にもかけてもらえず、王太子とも侮辱的な恋の終焉を迎えます。
こうして書いていると、全て暗い暗~い感じなのですが、青春を生きているときのナンネルはそこそこに華やかで美しく、時代が彼女を封印してしまったことが残念でなりません。誰かが彼女に「ナンネル、よく頑張ったね」と声をかけてあげられたら良かったのに…。
(2011年洋画)