権威ある賞をとったから言うのではないですが、文句なく素晴らしい良作。優等生過ぎるきらいはあるけれど、ジェフリー・ラッシュの名演がその硬さを取り除き、英国王の人間味溢れる側面をよく描いていると思いました。
吃音が原因でスピーチに自信を持てないイギリス王ジョージ6世が、良い指導者に巡り合って吃音だけでなく自らの過去をも克服し、堂々たる王となっていく様は、努力すること、自分の殻を脱ぎ捨てて体当たりでぶつかっていくことの大切さを、教えてくれたような気がします。

20世紀初頭、英国王ジョージ5世の次男ジョージ6世(コリン・ファース)は生まれついての吃音が元で、人前で話すことを極端に恐れていました。奔放な兄エドワード8世(ガイ・ピアース)が自身の色恋沙汰で王位から降りたことから、恐れていた王への即位、そして王たる者に佳必ずついてくる全国民を前にしたスピーチをしなければならない機会が巡ってきます。
妻のエリザベス(ヘレナ・ボナム=カーター)は、そんな夫を何とかしようと、あらゆる治療機関を巡り歩きますが、成果は思わしくなく、やっと辿り着いた言語指導者ライオネル(ジェフリー・ラッシュ)に一縷の望みを託します。

ライオネルは非常に変わった人物で、知的ではあるものの、例えば王と自分は同等な立場である、と宣言するなど、これまで王の周りにはいなかった人物でした。そして、これまでの治療とは違うアプローチでスピーチを矯正しようと試みます。
王に煙草をやめさせ、レコードを繰り返し聴かせ、幼少期の思い出に触れさせて吃音の原因を探り、言葉だけでなく肉体からのアプローチを試み…。王が絶対不可侵であった当時のことを考えると、実に画期的な対応方法だったと言えるでしょう。
そして、第一次世界大戦参戦を国民に知らしめる最も重要なスピーチの日が訪れ…はたして、ジョージ6世は、無事国民の前で一世一代のスピーチをすることができるのでしょうか?そして、王とライオネルとの友情は…?

人と人との出会いは正に一期一会。こんなすぐれた立場に居る者でさえ、良い師に巡り合うことは並大抵のことではなく、又、それを生かすことができるのも一種の才能なのだ、と、感銘を受けました。
(2011年洋画)