国籍や移民の若者達にとっての問題点が浮き彫りにされている。移民達にとって、長く過酷なドーバー海峡越え。それが正規のルートではなく、泳ぎであれば尚更である。
主人公は、フランスのクルド人難民キャンプにいる一人の少年。ロンドンに住んでいる恋人に会いたくてたまらない。だから、ここフランスのカレーにある難民キャンプへ来たのである。ここからロンドンへ旅立っていく仲間は多い。だが、必ずしもそれは成功を約束されない旅路である。クルド人の難民キャンプの様子が事細かに描かれ、定住できない彼らの嘆きを日常化の風景として表す。…その日常的に繰り返される迫害も、ボランティアの献身的な活動も、等しく冷静な視点で描き出す。配給される食事に並ぶ人々。プールに泳ぎの練習に行って、シャワーまで済まそうという発想を描いている所が、その日常性を物語る。
少年は、プールで泳ぎを教えているある男性と出会い、ドーバー海峡を泳いで渡るために泳ぎを教えてもらう。定住居を持たない少年は、その男性の家に泊まったりもする。だが、移民対策に厳しいフランスの行政から睨まれ、その男性との関係も困難を来たす。
無謀にも少年は、泳いでドーバー海峡を渡ろうとするのだが…。結末の身を切られるような辛さは、息子を持った親にとってはとりわけキツイ。現実をまざまざと見せ付けられる、国と民族の問題。世界は本当にこれからの若者のために存在し得るのだろうか?
(2011年洋画)