これは、評価が難しい。展開は速いし、面白いし、主人公の復讐心の原因があまりにもよく判るため、素直に単純に「面白い」と言い切ってしまっても良いのだけれど、ただの娯楽作品ではなく、みんな様々に、もし自分が犯罪に巻き込まれてしまったら、そして大切な家族だけが犠牲になってしまったら、更に公正な裁きの場であるはずの司法に裏切られ、正当な判決を下してもらえなかったら…と、自分に置き換えて考えてみると、耐え難い思いに襲われる、ブルーな思いの作品になるのである。なので、幸せな家庭を壊されて復習に燃えるクライド(ジェラールド・バトラー)の身になって最後まで鑑賞すると、検察側のニック(ジェイミー・フォックス)の裏をかき続けてくれ!と応援したくなるだろうし、ブルーな結末も一種のカタルシスで、逆にほっと胸をなでおろすような気持ちになるだろう。
ここからややネタバレです。
家に押し入って来た賊に目の前で家族を殺され、復讐に燃えるクライド(ジェラルド・バトラー)。その彼の報復手段が凄い。司法取引によって罪が軽くなった犯人に対してだけでなく、司法そのものにテロリズムで挑戦するのだ。
「皆殺し宣言」をして、一旦は収監されるものの、何故か取引に関わった司法側の人々が次々と暗殺される。やがて、野心家の検事ニック(ジェイミー・フォックス)にも魔の手は襲いかかり…。
非常にインテリジェンスがある上に暴力的であるクライドが、色々な意味で魅力的。家族を思う心、冷酷で冷静な計算し尽された犯行、主義主張の一本筋が通った見せ方。
ニック、こちらもインテリで冷静。もうちょっと情があってもいいだろ?と思う位に。この二人の壮絶なバトル(決して肉体的なバトルではない)が見もの。
ラストシーンの静かに燃え盛る炎は、きっとクライドの胸の内を表しているのだろう。諦観と、ある種の満足と、すべて失った者特有の冷たい炎なのだ。
(2011年洋画)