
皆さん迫真の演技で素晴らしいとは思いますが、主題があまりにも母性に頼りすぎている、というか、母性神話に基づいているような気がして、今一つ共感できませんでした。確かに、母と子の絆は唯一無二で不可侵のものだけれど、ヒロインとその実母をそこまで追い詰めなくても良いのでは…?結末は、いわゆる悲惨な作品とは違う意味でむごく、女の人生って、何のための、誰のためのものなのだろう?と、哀しくなりました。
自分を捨てた母親の行方を知りたい…社会的にも成功して、日々暮らしてはいるけれど、どうしても埋められない心の隙間のようなものを常に持ち、それが故にとことんまで人と向き合うことができないヒロイン(ナオミ・ワッツ)。彼女の自分探しは即ち産みの母親探し。出身である孤児院に手紙を託すものの、母親の行方はようとして知れず…。そんな中、上司(サミュエル・L・ジャクソン)と不倫の関係を持ち、彼の子供を一人で出産しようと決意する。
かたや、これまでの人生で、手放した娘のことを忘れた事はひと時もない、その産みの母親(アネット・ベニング)。彼女の人生は、常に満たされず、決して幸福とは言えない。彼女も又、娘の行方を知りたいと思っているのだが…。
互いに、自分は必要とされているのだろうか?何に?そして誰に?という思いを胸に抱きながら、再会を果たしたとしても、それが歓迎されるべきことなのか、諦めて自分の心に折り合いをつけるべきことなのか、いずれにも自信が持てず、人生がそのことのみを中心に展開されていく悲劇。女の人生をもて遊んでいるようで、はっきり言って不快でした。

(2011年洋画)